リアリティ

コメディ

終わりの鳥 (2023年) 110分【ネタバレ・考察】ポスターの印象とは違い、ダメな母親の成長物語。A24に苦手意識ある人でも観やすいかも。ファンタジーなのに現実的で、悲しいのに解放的な、死の必然性についてリアルにコミカルに描いた不思議な空気感の作品。

ネタバレ無し感想ポスターデザインがめちゃくちゃ良いですよね。 このカラフルなデザイン。フライヤーを飾りたいほどです。しかし、本作の映像の色彩などの世界観は案外現実的です。予告編を観た段階ではA24らしい映画(飲み込みずらい映画)なのかなと思って気構えて観に行ったのですが、思ってたより観やすい作品でした。A24らしさを期待したらガッカリするかもしれませんが、A24に苦手意識がある人は観やすいかもしれません。個人的には退屈ではないのですが、画面があまり変わり映えしないのでまったりしてました。映画館で観るならポップコーンあった方が良かったかもですね。死についての話ですが、コメディトーンの作品なので観た後そんなに引き摺らないです。イギリスのコメディが好きな人は好きかもしれません。映画館で観たのですが笑い声がちらほらと聞こえていました。母娘が死に直面するという内容ですが、綺麗事にも頼らず、感動ポルノに着地せず、個人的には好きなタイプのラストでした。基本情報Tuesday終わりの鳥2023年 110分キャッチコピー『"お迎え"に参りました』製作国 : アメリカ/イギリス日本公開 : 2025年4月...
ドラマ

シンシン/SING SING (2023年) 107分【ネタバレ・考察】「グリーンマイル」、「ショーシャンクの空に」を圧倒的に凌駕する刑務所映画の傑作。綺麗事に頼らず、地に足が着いた切実な刑務所映画。その場にいるかのようなリアリティ。痛みも温もりも描かれており、魂を感じる名作。

ネタバレ無し感想宣伝文句で「グリーンマイル」や「ショーシャンクの空に」が使用されていますが、上記2作品より圧倒的に素晴らしかったです。 個人的にはNo.1の刑務所映画です。個人的には上記の2作品はあまりにも現実離れしている印象だったので全く刺さりませんでしたが、本作はブッ刺さりました。本物の元収監者が出演していて、さらに長回しのシーンが多く、カメラのブレもドキュメンタリーかのようで、とにかくリアリティが凄いです。あと噛んでいるシーンもそのまま使われていました。しかも噛んでいるシーンの俳優を調べたら元受刑者ではなくプロの俳優の方だったので、見終わった後に笑いました。是非映画を観て確かめてみてください。多分あれは噛んでます。笑キャスト情報は確認せずに観てほしい本作には元収監者が出演しています。プロの俳優と元収監者が混ざって演技をしています。本物の元収監者がプロの俳優に太刀打ちするって相当難しいはずなのに見事に見分けが付かなくなっていました。その逆も然りです。とにかく本作はドキュメンタリーを観ているのかと見間違うほどのリアリティがありました。誰が受刑者で誰が俳優なのか、予想してみて欲しいです...
ドラマ

エゴイスト (2022年) 120分【ネタバレ・考察】自分のためかもしれない愛が誰かを救っている。ゲイの恋愛映画かと思ったら繊細で美しい人類愛についての映画だった。

ネタバレ無し感想タイトルとパッケージを見たときは、ゲイが主人公の恋愛映画かと思っていました。 『君の名前で僕を呼んで』のような、切なくも濃密な映画なのかな?と思っていたらもう全く違う作品でした。あと悲しいラストなのかと思って覚悟してましたが、決して後味の悪いラストではなく、ものすごく心が暖かい気持ちになりました。ドキュメンタリーのような映像で、俳優の演技も本当にリアルで没入感があります。ものすごく繊細な脚本だと感じました。そっと心に触れてきて暖かい感じ。映画でこんな気持ちになったのは初めてです。受け取り手によってかなり作品の印象が変わりそうだなと思いましたが、観客を置いていかない程度の絶妙な余白を残す美しい作品です。もう一回観たい。演技力の大勝利鈴木亮平の演技力が半端じゃないです。ドキュメンタリータッチなのも相まって、全員この現実に存在しそうな説得力があります。映像にうつっていない姿まで想像できてしまうほどの実在感。こんな繊細な役を演じ切った鈴木亮平が凄すぎます。この人、狐狼の血で目を潰してた人ですよね?しかも、パンツ被ったりしていた人ですよね?どう考えても同じ人には見えないです。同じ...
ドラマ

クレイマー、クレイマー (1979年) 105分【ネタバレ・考察】モラハラ男がシングルファーザーとして成長していく話。

ネタバレ無し感想モラハラ夫が、見下していた妻が案外優秀だったということと、子育てと育児についてを学ぶ話です。男と女で全く意見分かれそうだし、モラハラされた経験があるかないかでまた全く意見分かれそうな映画です。”モラハラ夫”がどんなものなのか想像がつかない人からすると父親と息子が絆を取り戻すハートフル作品に見えるかもしれません。あるいは、無責任で自分勝手な母親に振り回された父親を描いた作品と捉える人もいそう。タイトルは前々から知っていたんですが、まさかこんな話だとは思ってなかった。なんかインクレディブル・ファミリーを思い出しました。本作は1979年の作品でインクレディブル・ファミリーは2018年の作品。39年経っても、世の中あんま進化してないんだなと思いました。複雑になってしまいそうな話なのに、全く説明的でなく、すんなり観れるのがすごいです。人物描写がしっかりされてて引き込まれました。息子がめちゃくちゃ可愛い。あとメリル・ストリープが超絶美しい。彫刻みたいでした。基本情報Kramer vs. Kramerクレイマー、クレイマー1979年 105分制作国 : アメリカ日本公開 : 1980...
B級ホラー

拷問男 (2012年) 107分【ネタバレ・考察】グロゴアの皮を被った地に足の着いた社会派スリラー。完全に邦題で損している良質低予算映画。泣いた。結構胸が痛くなる展開。

ある種のタイトル詐欺。原題の”Daddy’s Little Girl”のままの方が良かったと思います。B級スプラッターかと勘違いさせる完全な邦題ミスです。拷問男というタイトルで”ムカデ人間”や”ホステル”のような映画を想像した人は多いんじゃないでしょうか。人権ガン無視で人体破壊をしまくるヤバい男が出てくる映画かと思ってしまいました。
まさかこんな良作だったとは。