アイム・スティル・ヒア (2024年) 137分【ネタバレ・考察】実在するヒーローを描いた作品。社会的意義がある作品であることはわかるものの、観る人の知識量によって理解度が変わる映画という印象。徹底的に母親視点で描かれるため、全体像を把握することができず、私には苦行だった。

アイム・スティル・ヒア

ネタバレ無し感想

私はチラシの情報と予告編のみ目を通してから視聴しました。
そのため、ブラジルの軍事政権や政治的な知識、ましてやブラジルの文化や国民性について全く無知の状態で視聴しました。

こんな人のレビューが知りたい

1970年代のブラジルの政治的状況や当時の生活の様子などに詳しい人のレビューが知りたいと思いました。

私は全くわからなかったため、”何が起きているのかよくわからない”というのが本作を観ている時の感情です。

本作はそれを追体験させるための映画

よくわからなくて正解なのかもしれません。

本作の主人公である母親視点でのみ描かれます。
そのため母親が体験した混乱を観客に追体験させるような作品になっていたように思います。

家族を失ってしまうかもしれない混乱の中、不安や恐怖を常に感じながらなんとか生きていかないといけない。

そんな母親の経験を追体験させる構造の作品だったと思います。

あまり観たことがないタイプの作風だった

ドキュメンタリーほどの臨場感はあまり感じず、劇的な展開が起こっているのにも関わらず、その点は非常に静かに描かれる渋い作品という印象でした。
個人的には退屈さを感じる作品でしたが、ところどころ見どころがあり、途中からは勉強する視点で見ていました。

独特な作風の作品で、個人的にはあまり観たことがないタイプの作品でした。
そのためどのような心持ちで観たらいいのかわからず、イマイチ気持ちが乗りませんでした。

とても静かな作品

家族が軍事政権によって幸福だった人生を狂わされるという内容なのですが、淡々としており、かなりの集中力と想像力を求められる印象の作品です。

見る側の知識量に委ねられた作風

史実を元にしているため、無知の人間からしたら無意味に思えるようなシーンでも意味がしっかりあるのだと思います。
しかし、本作はそういった知識のない人間からするとあまりにも説明不足であり、無意味に思えるようなシーンがたくさんあります。

副音声が欲しかった

例えば、単にレコードが映されるシーンがありますが、イマイチなんの意味があるのかわかりません。

しかし、本作に意味が無いはずかないのです。
その点において単に観ているだけでは理解できないため、退屈だったのが辛かったです。

各側面においてリテラシーを求められる

ブラジルの政治的な歴史、軍事政権下における市民の生活、映画的表現が意味するもの。
それぞれの分野において知識がない人間からしたら伝わってくるものが少なく、密度の高い作品であるにも関わらず、意味がわかりません。

人物への感情移入ができるかに委ねられている

各知識がない人からしたら登場人物への感情移入ということ以外、映画を咀嚼する手段が残されていません。

私は人物の印象しか残っていなかったため、無意識にそのスイッチが入っていたのだと思います。

予習はするべきではなさそう

本作の意図を汲み取った場合は全くの予備知識を入れずに観るのが正解なのではないかと思います。

ただ、私のように退屈してしまう可能性もあるので予備知識を入れてから観に行ってもいいかもしれません

一応、町山智浩の映画紹介の動画を貼っておきますね。

多分、人によっては寝ます

なんかテンポ遅いし映像も地味なので途中から集中力切れてました。
配信だったらところどころ倍速にしてたと思います。

意味ありげなシーンは多々ありましたが、いかんせん私にはブラジルの知識がないからなんの意味があるのかまるでわからず退屈でした。
寝る人は寝ると思います。

とにかく母親が凄すぎる

忍耐と知性の権化のような母親が出てきます。
この母親が凄すぎて、後半はかなり痺れました。

結構日本人っぽい?

意外だったのは、感情の発露が案外少ないし、人物同士の衝突もそんなに無かった点です。

ブラジルって灼熱の太陽のもと、情熱的な人たちが多いのかと思っていましたが、とても静かに耐える姿が日本人に似ているような雰囲気を感じました。

そういう意味では観やすいかもしれません。

ブラジルへの理解は深まらなかった

本作はどこまで行っても母親の体験を追体験させる作りになっているため、全体像が把握できず勉強にはなりませんでした。
あとで自力で調べないといけなそうです。

基本情報

Ainda Estou Aqui /I’M STILL HERE
アイム・スティル・ヒア
2024年 137分

アイム・スティル・ヒア

https://www.imdb.com/news/ni65137401/

キャッチコピー『言葉を奪われた時代ー
彼女はただ、名を呼び続けた。』
製作国 : ブラジル・フランス
日本公開 : 2025年8月8日
イタリア(ヴェネツィア):2024年9月1日
ブラジル:2024年11月7日
フランス:2025年1月15日
興行収入 : $36,100,000
レイティング : PG-12
ジャンル:ドラマ / 伝記

あらすじ

1970年代、軍事独裁政権が支配するブラジル。元国会議員ルーベンス・パイヴァとその妻エウニセは、5人の子どもたちと共にリオデジャネイロで穏やかな暮らしを送っていた。しかしスイス大使誘拐事件を機に空気は一変、軍の抑圧は市民へと雪崩のように押し寄せる。ある日、ルーベンスは軍に連行され、そのまま消息を絶つ。突然、夫を奪われたエウニセは、必死にその行方を追い続けるが、やがて彼女自身も軍に拘束され、過酷な尋問を受けることとなる。数日後に釈放されたものの、夫の消息は一切知らされなかった。沈黙と闘志の狭間で、それでも彼女は夫の名を呼び続けた――。自由を奪われ、絶望の淵に立たされながらも、エウニセの声はやがて、時代を揺るがす静かな力へと変わっていく。

※参照元:公式サイト


日本版 予告編

英語版 予告編

スタッフ

監督 : ウォルター・サレス
脚本 : ムリロ・ハウザー/ヘイトル・ロレガ
原作 : マルセロ・ルーベンス・パイヴァの小説” I’m Still Here “
製作 : マリア・カルロタ・ブルーノ/ロドリゴ・テイシェイラ/マルティーヌ・ド・クレルモン=トネール
音楽 : ウォーレン・エリス
配給 : ブラジル:ソニー・ピクチャーズ・リリージング
フランス:StudioCanal
日本:クロックワークス

キャスト

フェルナンダ・トーレス:エウニセ・パイヴァ、ブラジルの軍事独裁政権に異議を唱えた弁護士、活動家
フェルナンダ・モンテネグロ:エウニセ・パイヴァ
セルトン・メロ:ルーベンス・パイヴァ、ブラジルの元下院議員
ギレルメ・シルヴェイラ:マルセロ・ルーベンス・パイヴァ
アントニオ・サボイア:マルセロ・ルーベンス・パイヴァ
ヴァレンティナ・ヘルツァージ:ヴェラ・パイヴァ
マリア・マノエラ:ヴェラ・パイヴァ
ルイザ・コソフスキ:エリアナ・パイヴァ
マルジョリー・エスティアーノ:エリアナ・パイヴァ
バーバラ・ルス:ナル・パイヴァ
ガブリエラ・カルネイロ・ダ・クーニャ:ナル・パイヴァ
コラ・モラ:マリア・ベアトリス・ファッチオラ・パイヴァ
オリヴィア・トーレス:マリア・ベアトリス・ファッチオラ・パイヴァ
プリ・ヘレナ:マリア・ジョゼ
ウンベルト・カラン:フェリックス
マエヴ・ジンキンス:ダルヴァ・ガスパリアン
カイオ・ホロヴィッツ:リカルド・ゴメス・ピンパン
カミラ・マーディラ:ダラル・アシュカル
チャールズ・フリックス:フェルナンド・ガスパリアン
ルアナ・ナスタス:ヘレナ・ガスパリアン
イザドラ・ルパート:ラウラ・ガスパリアン
ダニエル・ダンタス:ラウル・リフ
マイテ・パディリャ:クリスティーナ
カルラ・リバス:マーサ
ダン・ストゥルバッハ:ボカイウヴァ・クーニャ
ヘレナ・アルベルガリア:ベアトリス・バンデイラ

アワード

  • 2025年アカデミー賞:国際長編映画賞
  • 2025年ゴールデングローブ賞:主演女優賞 (ドラマ部門)
  • 2025年ゴヤ賞:イベローアメリカン映画賞
  • 2024年マイアミ映画祭:観客賞
  • 2025年ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞:外国語映画トップ5
  • 2025年サテライト賞:主演女優賞 (ドラマ部門)
  • 2024年第81回ヴェネツィア国際映画祭:脚本賞/Green Drop賞/SIGNIS賞

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おせっかい情報

見る際の注意

特になし。

こんな人におすすめ

実話ベースの作品が好き。

この作品が好きな人が好きそうな映画

※完全な偏見です。


⚠️ネタバレ有レビュー⚠️

海辺で暮らす裕福で幸せな家族

お手伝いさんがいるくらいですし、部屋も広いし、裕福な家庭であることはわかります。
しかし、当時のブラジルの水準でいうとどれくらい裕福であったのかあんまりわかりません。

1970年代のブラジルの一般層の生活水準と比較ができないため、この家庭の階級があまり把握できませんでした。

私には効果的でなかった

なんか、序盤でじっくり家族の平穏な生活が描かれます。

これはこの幸福な家族が後に崩壊してしまう悲劇性を高めるのに効果的だとは思いましたが、個人的には画面的に面白くなく、退屈でした。

恐らく、私があまりブラジルの文化に興味がないからという点と、ドキュメンタリチックに描かれるのでグダグダしている印象がありました。

実際の人々の生活はグダグダですからね。

父親は何をしていたのか

1964年、軍事クーデーターによってジョアン・グラール大統領が打倒され、第四次ブラジル共和国(1946年 – 1964年)が終焉し、
ブラジル軍事独裁政権(1964年 – 1985年)が開始された事件であるそうです。

その際に下院議員の職を剥奪されたのが本作の父親だそうです。

その後、公務員に復帰し、家族には秘密裏に政治亡命者への支援を続けていたそうです。

それが軍事政権にバレて、調査が入り、反軍事政権側の人間として拘束されたということなのでしょうか?

映画では何をしていたのかイマイチわからなかった

この映画が徹底的に母親視点で描かれているため、父親が連行されていく際、なんの容疑だったのかまるでわかりませんでした。
後半になってなんとなくわかるのですが、明確に判明するわけではありません。

私の知識量でこの映画を鑑賞するには、あまりにも情報量が少なく、永遠と続くと何を見せられているのかわからず、眠くなっていました。

家族まで監視下に置かれる

なぜ夫が連行されたのか、家族には検討もついていない様子でした。
そして、突然複数人の男たちに監視され始めます。

この際もどこか緊張感をあまり感じませんでした。
特に危害を加える気がなさそうな雰囲気がしていたので私は”まあ、監視のためにいるだけなのね”という程度に感じていました。

この子達も人の子

監視役の男たちですが、息子とサッカーゲームで遊んでいたり、共に食事をしていたり、子供たちの気を引こうと変な顔をしてみたり、

めっちゃ子供好きでしたね?

看守も不本意であった

数ヶ月間、尋問を受け拘束されていた母親ですが、看守が彼女に『私にとっては不本意であった』と言っていましたね。

政府と個人は切り分けて考えないといけない

政府の方針や指示で自分の心情とは全く相反することをさせられていたのですね。
これは非常に共感できました。
仕事のためにやりたくないことをやらされているということですね。

彼らも結局は人の子で心があるのだと思うと悲しい現実だなと思いました。

逆らえば何をされるのかわからない

監視役の男たちも、看守の男も、本来はこのような人権侵害に憤りを感じていたのでしょう。
しかし、逆らえば容易に殺されるでしょうし、自身の家族にまで被害が及ぶ可能性を考えるとそうせざるを得ない状況にいたのだろうなと想像してしまいます。

ここから母親の覚悟を感じた

ようやく解放され、1人でシャワーを浴びていました。
このとき、泣いていましたが、この時に母親は決心したのではないかと思いました。

ここから怒涛の母親の行動力が炸裂していましたね。

子供に事情を徹底的に隠す

私はこういう母親が心底嫌いです。
何かトラブルが発生しているとき、子供に隠す母親が本当に嫌いです。

というのも自分の母親が無能で隠すタイプだったからですね。
子供をみくびんなよ。
隠した割に隠しきれず、事態がそこそこ悪化し、取り返しがつかなくなってから私に話すので本当にイライラするんですよね。

ただこの母親は違いました。

しごでき過ぎ!

この母親、仕事できすぎ!かっこよすぎ!
痺れるって!強過ぎて痺れる!

頭良過ぎ!冷静過ぎ!
かっこよすぎ!

淡々とやるべきことをこなし、子供たちの安全を守る。
まさに芯の強い母親という感じでした。

ふと思い出す父親

なんかふと、父親のことを思い出してしまいますね。
序盤にしか登場していませんでしたが、ずっと存在感があります。

ふとした時に母親とは非にならないくらい酷い状態で戦って殺された父親のことを考えてしまいます。

この家族が囚われることなく、母親も解放されたのは父親が少なくとも家族に危害が加わらないような言動をしたのかなと、想像してしまいます。

あの母親ですから。
父親もよっぽど頭が良かったのだろうと思いました。
自分の犠牲で家族を守れるのであればと思っていたのではないかと考えてしまいます。

取り乱さない

母親、とにかく優秀過ぎます。
淡々と準備し、メイドに未払いの給料を支払い、引越し、大学へ通い、淡々と戦ってました。
感情を徹底的にコントロールして、間違った判断をひとつもしませんでした。

演技力がすごい

震えてましたね。
あんな演技みたことがありません。
すごすぎ。

しかもフードコートで食事をするシーンでの表情も忘れられません。
言葉で表現できないような感情を体現してくれていたと思います。
この女優さん凄すぎ。天才ですね。

徹底的に取り乱さない

この人は本当に感情のコントロールに長けている人物なんだなと思いました。

認知症になり、車椅子で生活しているとき、父親のニュースを目にしていましたね。

その際も”あ、私の愛した夫だわ”って表情をしていましたがそれ以上に何か心情を吐露することもありませんでした。
認知症ということもあったのかもしれませんが、この母親の性格上、感情的にはならずに耐えるという人なんだろうなと思いました。

印象に残っているシーン

『お母さんはいろんなことを知っているのよ』というシーンがやたらと印象に残っています。

父親が娘と歯を埋める遊びをしていたことを母親は把握していて、
娘の乳歯が抜けそうなことも把握していて、
マッチ箱に入った歯を見つけた瞬間に瞬時に娘の乳歯だと把握したところ、
母!!!!!!って感じがしました。

明確にコミュニケーションをとっていなくても家族ならわかることという感じがして家族愛を感じました。

写真などの記録媒体

シティ・オブ・ゴットでも写真が体制派への攻撃としてカメラが使用されていました。
本作でも、仮に政府に潰されたとしても私たちがここにいた存在は記録媒体によって残してやるという反撃のように感じました。
政府が抹消しようとしても、私たちがここに存在したという証拠という感じでしょうか。

最後まで家族を守った母親

大家族になっていましたね。
夫への愛、子供たちへの愛が何よりも強い母親が守りぬいてきたものがあの大家族だと思うと、ヒーローは実在したのかと思いました。

試写会の様子 

参考サイト

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