ネタバレ無し感想
常軌を逸したホラー映画はなぜかいつも幸福度ランキング上位国で産まれる謎。
本作はスウェーデン出身で、ポーランドで映画製作を学んだマグヌス・フォン・ホーン監督によるデンマーク映画です。
この映画、やば過ぎる。
実話ベースじゃなかったら上映禁止になってたんじゃないかというぐらいやばい内容です。
胸糞映画を作ってやろうと思っている人なら誰しも1番最初に思いつくと思うのですが、誰もこの一線を越えようとは思わないポイントです。
倫理的に今までどの映画も踏み越えられなかった一線を、本作は実話ベースであるという点を盾に踏み越えてます。
映像美
映像はグロくないどころか、映像は非常に美しいです。
音もかなり効果的に使われており、緊張感がずっと続きます。
個人的にこの緊張感の演出は直近でみた教皇選挙に近かったです。
張り詰めています。ひと呼吸おかせてくれません。
ずっと休ませてくれません。
教皇選挙とガール・ウィズ・ニードルを連続で観たら、凝ってない肩が凝ると思います。
事前情報はいらない
実話ベースですが、事前情報を一切見ずに観た方がショッキングで良いと思います。
個人的には本作は事前情報なしで観るのがベストかなと思います。
強烈めにトリガーアラート
直接的な描写はありません。むしろグロくありません。
しかし、妊娠中の方や、赤ちゃんが出てくるホラーが苦手だったり、赤ちゃんや子供が酷い目に遭う映画がダメな方は心理的負担が大きいかもしれません。
視聴の際はご注意ください。
ちなみに私は二度と見たくないです。
基本情報
Pigen med nålen/The Girl with the Needle
ガール・ウィズ・ニードル
2024年 115分
キャッチコピー『その街では、人がよく消えた』
製作国 : デンマーク/ポーランド/スウェーデン
日本公開 : 2025年5月16日
フランス(カンヌ国際映画祭):2024年5月15日
ポーランド:2025年1月17日
デンマーク:2025年1月23日
興行収入 : 48万6764ドル
ジャンル:クライム / ドラマ / ホラー
あらすじ
第一次世界大戦後のコペンハーゲン。 お針子として働くカロリーネは、アパートの家賃が支払えずに困窮していた。 やがて勤め先の工場長と恋に落ちるも、 身分違いの関係は実らず、彼女は捨てられた挙句に失業してしまう。 すでに妊娠していた彼女は、もぐりの養子縁組斡旋所を経営し、 望まれない子どもたちの里親探しを支援する女性ダウマと出会う。 他に頼れる場所がないカロリーネは乳母の役割を引き受け、 二人の間には強い絆が生まれていくが、 やがて彼女は知らず知らずのうちに入り込んでしまった 悪夢のような真実に直面することになる。
※参照元:公式サイト
日本版 予告編
英語版 予告編
スタッフ
監督 : マグヌス・フォン・ホーン
脚本 : マグヌス・フォン・ホーン/ライン・ランゲベック
製作 : マレーネ・ブレンコフ/マリウシュ・ヴウォダルスキ
音楽 : フレデリケ・ホフマイヤー
配給 : 日本:トランスフォーマー
キャスト
カロリーネ:ヴィクトーリア・カーメン・ソネ
ダグマー:トリーン・デュアホルム
ピーター:ベシーア・セシーリ
ヨルゲン:ヨアキム・フェルストロプ
フリーダ:テッサ・ホーダー
エレナ:アヴォ・ノックス・マーティン
裁判官:アンダース・ホーヴ
スヴェンセン:アリ・アレクサンダー
アワード
- 2024年The Art of Cinematography Camerimage国際映画祭:ゴールデンフロッグ
- 2024年ヨーロピアン・フィルム・アワード:美術賞・作曲賞
- 2024年ポーランド映画祭(FPFF):シルバーライオンズ/助演女優賞/最優秀撮影賞/最高の音楽/最優秀アートディレクション/最優秀衣装デザイン賞
- 2024年セビリアヨーロッパ映画祭:最優秀監督賞/最優秀女優賞/最優秀撮影賞/最優秀アートディレクション
- 2025年Göteborg Film Festival (GFF):FIPRESCI賞
- 2025年全米批評家協会:国際映画トップ5
ポスター/パッケージ
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おせっかい情報
見る際の注意
本当にしんどい内容です。
妊娠中の方や赤ちゃんがどうにかなってしまう作品が苦手な方はご注意ください。
こんな人におすすめ
実話に基づいた作品が好き。
胸糞悪い映画が好き。
映像や音が美しい作品が好き。
この作品が好きな人が好きそうな映画
- 子宮に沈める
- 4ヶ月、3週と2日
※完全な偏見です。
⚠️ネタバレ有レビュー⚠️
話を整理させてくれ①
裁縫工場で働く主人公。
夫は戦場へ行き、音信不通。
工場の経営者と恋に落ち、人気のない路地でセックスして妊娠。
そしたら死亡したと思っていた夫がひどい傷とPTSDを負って帰還。
すでに工場長の子を妊娠してしまったため、夫を追い出す。
工場長は妊娠した彼女と結婚する気だったが、母親に反対され、手切れ金を渡して絶縁。
追い詰められた主人公は大衆浴場で太い針を使用して自分で危険な中絶を試みたが、近くにいたダグマーに止められ、産んだら尋ねてきなさいと言われる。
話を整理させてくれ②
夫はひどいPTSDを発症しており、見せ物小屋で働いている。
結局夫と一緒に住むことに。
主人公は炭鉱で仕事中に出産。
夫は他人の子でも気にせずに育てる気でいたが、主人公はダグマーに赤ん坊を引き渡す。
仕事がない主人公は再びダグマーの元へ行き、母乳が出るので働かせてくれと頼み、住み込みで働くことに。
ダグマーは金銭と引き換えに、望まない出産にて路頭に迷った女性たちから赤ちゃんを引き取り、殺していた。
ダグマー自身も精神を病んでおり、薬物を日常的に使用していた。
娘も実の子ではない様子。
話を整理させてくれ③
とある日、その娘が赤ちゃんばかり可愛がる主人公に嫉妬し、赤ちゃんを殺そうとする。
瞬発的に娘を殴ってしまい、婦人に赤ちゃんを取り上げられる。
その子を養子に出すという婦人の後をついていったら、赤ちゃんを圧殺して下水道に流していた。
全てを知った主人公はショックで薬物漬けとなってしまう。
婦人は赤ちゃんを圧殺に強制的に参加させ、必要なことをしていると主人公を納得させようとする。
話を整理させてくれ④
やっぱり赤ちゃんを返して欲しいという最後の母親から警察に通報されてしまい、主人公は飛び降り、逃げて元夫と再び生活をすることになる。
婦人は逮捕され、裁判を受ける。
そして主人公は婦人の血の繋がらない娘を孤児院から引き取りこの映画は終わる。
個人的には無理なものだらけのホラーだった
子宮、女性器、妊娠、中絶、出産、針、全部が怖い私のために作られた映画です。
マジで私の恐怖のツボを押しすぎ。
全部怖いホラーでした。
触診のシーンも怖くて無理でした。
ずっと首元を押さえたくなる映画でした。
キッツイ。
実話ベースだから許される内容
これが完全な創作なら確実にアウトでしょう。
上映禁止レベルでしょう。
赤ちゃんと殺して金儲けとか。
事前情報を全く入れずに観たので、人身売買かと思っていました。
よっぽどやばい内容でした。
男は蚊帳の外
なんで女だけで完結すんだよ。
孕ませた男全員出てこい。
ババア行け!男たちも殺せ!野放しにするな!
なんで男だけ自由に生きていられてんだ。
ほんと現実でも女だけで完結するんですよね。
イライラするけど現実ですね。
『ママンに反対されたから君とは結婚できないしん🎶』
ってだけでなんの身体的苦痛もなく逃げられる男は楽でいいですね。
ふと思い出したハンガー
アメリカでは宗教上の理由で、州によっては中絶が禁止になりましたね。
これは性被害者も含め中絶禁止です。
もし望まない妊娠をしてしまい中絶を行う場合は、あの広いアメリカを大移動して、中絶可能な州に移動して中絶するしかないそうです。
貧困層は移動できずに産むことになるでしょう。
アンチセーフティーネット、自己責任主義のトランプ政策が進んだら、追い詰められた貧困層がこの映画みたいな事件を起こしてもおかしくありません。
重ねて恐怖を抱いて観ていました。
これからも全然起こりうる事件なのかと思って震えていました。
頼むから社会福祉に到達してくれ。
アメリカって昔ハンガーによる中絶が問題になっていたらしいですね。
戦争帰りの夫
自分の子じゃないとわかっていても育てようとしていたニキに任せたかったですね!!!!!!!!!!!!!!
ニキに母乳が出ればなんとかなったのに!!!!!!!!!!
白いものは精子しか出ないのが悔やまれる!!!!!
自分が産んだわけでもないし自分の子供でもないし取り上げられないよね。
ただ結構キツめのPTSDを患っているようだったので虐待しそうです。
PTSDで悪夢をみて臨月の嫁の首を絞めていたほどに精神を病んでいました。
彼にもサポートが必要でとても育てる余裕があるようには見えませんでした。
でもコイツが引き取っていてくれたらな殺しはしなかったと思う!!!!!!!!!!!
たぶん子供はニキの顔に見慣れて育つから、子供に受け入れてもらえることでニキの心も多少は救われてお互いを救う存在になり得たのに。
男は蚊帳の外ですから。親権も育休も女のものですから。
四方八方救いがない地獄
福祉の大切さを実感します。
この映画の本当に地獄なポイントとしてある意味、全員が最善を尽くしています。
選択肢がありません。
サイコもいなければ異常者もいません。
赤子殺しのババアも普通の感覚を持ってちゃんと病んでいます。
それが地獄でした。
快楽殺人鬼でない点がこの映画の胸糞度合いに拍車をかけています。
社会に追い詰められた人たちの話です。
誰もやらないから引き受けた役割
あのババアのところに女たちがこぞって行っている反面、きちんと孤児院もありました。
孤児院に引き取ってもらえないからああいうことになっているということなんでしょうか?
あのババアは最悪の決断をしていましたが、誰もやりたがらない上、誰も解決してくれない問題の処理を引き受けていました。
ちょっと100%の気持ちでババアを責める気にもなれない。
病んでるダークヒーロー
ババアも病んでます。
薬物でなんとか痛みを誤魔化していました。
『いまお乳をあげて』と言って最後の乳を飲ませて、
『医者や弁護士の養子になるわ』と母親の罪悪感を癒して、
『正しい選択をしたのよ』と徹底的に困った女性たちの味方でいてあげていました。
自分の精神をすり減らして路頭に迷った女を救っていたわけですね。
誰もやらないから私がやっているのよ、、、。
多分、憎んでいない
主人公、裁判にきていました。
婦人は全てを自分のせいであると罪を被っていました。
そして娘に会うことを懇願していました。
主人公も最初はニードルで赤ちゃんを殺そうとしていましたからね。
生活もままならず、相当追い詰められていたし、出産も犬や猫と同じような環境で行っていましたからね。
憎んではいなさそうだと思いました。
ババアの子を引き取っていましたね。
観ているこっちからしたら誰かを憎めた方が楽なんですが、そんな逃げ道この映画は用意してくれません。
誰がフリークスなのか
この映画もそれを問うています。
フリークスを作り出すのは社会でした。
高い税金を払う理由
こういう人を生み出さないために高い税金を払うんだぞ!っていうので必要な映画なのかなと思いました。
この映画、社会福祉が最も手厚いとされているデンマークで作られているので、この最悪のケースを見て福祉の大切さを実感して社会を回していくのかな。
本作の元となった実際の事件ってなに?
デンマークで起こった連続乳児殺人事件が本作のインスピレーション元となっています。
映画とは違い、実在の人物はサイコパスっぽいです。
ざっくり詳細まとめてみました。
ダグマー・オーヴァーバイ

https://lex.dk/Dagmar_Overby
Dagmar Overbye
1887年4月23日 – 1929年5月6日(42歳没)
デンマークの連続殺人鬼
事件概要
デンマークの首都コペンハーゲンにて、望まない出産をした女性か「良い家庭に預ける」と約束して赤ん坊を引き取り、報酬を受け取っていた。
しかし、実際には赤ん坊を殺害していた。
犠牲者:自身の子供1人を含む9人から25人の子供を殺害
犯行期間:1915年 – 1920年
判決:死刑、後に終身刑へ減刑
遍歴
ダグマーは子供の頃から法律に違反した問題を起こしていた。
窃盗罪で有罪となり、1909年(22歳の頃)に初犯で捕まった。
第1子となる男の子を出産したが、この子はダグマーが祖母と暮らしていたときに、謎の死を遂げた。
1915年頃(28歳)にデンマークの首都コペンハーゲンに移り、キャンディショップを開いた。
そこで彼女はスヴェンセンという男と出会い、一緒に暮らすことになった。
彼女は彼との間に子供をもうけたが、その子も原因不明で死亡している。
確定している殺人
1916年(29歳)にとある夫婦の家で最初の殺人を犯した。
彼女は広告を通じて、2人目の子供を出産したばかりの若い未婚の母親と接触した。
ダグマーは、この子供を養子にすることを申し出て、12クローネを受けとった。
同日、彼女は子供の首を絞めて墓地に投げ込んだ。
裁判中、彼女はなぜそんなことをしたのか分からないと主張している。
裁判
その後の4年間で、彼女は少なくとも7人の子供を殺害したとされているが、おそらくはそれ以上だと言われている。
地方裁判所の尋問中に彼女は最大16件の児童殺害を自白したが、高等裁判所では合計9件の殺人の証拠のみが提出された。
殺害の流れ

https://lex.dk/Dagmar_Overby
殺人事件のパターン自体は全て同じだった。
ダグマーは新聞広告を通じて絶望した母親たちと連絡を取り、一時金を受け取り子供を裕福な家庭の養子にするとし、その日のうちに子供を殺害した。
殺害方法は絞殺から溺死まで様々で、死体は埋められたり、焼かれたり、屋根裏に隠されたりした。
弁護士はオーバーバイ自身が幼児期に虐待を受けていたことを弁護の根拠としたが、その主張は裁判官の心を動かさなかった。
その他
まあ、映画のなかの話だし🎶って思っているお花畑の恥ずかしい連中には悲報です。
現実でも赤子は殺されています。
ちょっと検索しただけで腐るほどこういう事件出てきます。
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試写会の様子
#ガール・ウィズ・ニードル 試写会
— あやちまる@怒りの映画垢 (@ayachimaru96) April 22, 2025
私が観たいと喚いていたら、またもや@soraokarei 様が同伴者として連れて行ってくださいました😭🖤嬉し過ぎる😭🖤
過去に類を見ないとんでもないホラー映画。
人によってはガチのトラウマ映画。
直接的描写はありませんが、ご覧なる方は赤ちゃん注意です⚠️ pic.twitter.com/WK0qg5BEjq
#ガール・ウィズ・ニードル
— あやちまる@怒りの映画垢 (@ayachimaru96) April 22, 2025
世界の幸福度ランキングでTOP3に食い込んでいる国の映画のやばさたるや半端じゃない。
反動なのかしら。
この映画もかなりショッキングで生々しく恐ろしいホラーだった。
ASMR好きな人も楽しめると思う。音がめちゃくちゃいい。映像もいい。
内容は近年稀に見る胸糞。 pic.twitter.com/WBWh0Gwsen
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