ネタバレ無し感想
野火を何も知らない方にはオススメはします。
人類全員がとあるシーンのショックを味わうために見た方がいいんじゃないかと思いますが、
映画としては微妙でした。
1959年の白黒版を先に観ていてよかったなと思いました。
本作を最初に観ていたら全然意味わからんかっただろうし、もっと評価が下がっていたかもしれないです。
主人公は飢餓と、すぐ隣にある死の恐怖に追い詰められていきますが、超えてはいけない一線を常に意識してなんとか生き残ろうとしています。
その葛藤があまり伝わってこなかった印象です。
本作はそもそもリメイクのつもりで製作されていないそうなのですが、オリジナル版の衝撃を上回ることはなかったです。
残酷ゴアシーンの衝撃はもちろんリメイク版の本作の方がすごかったですが、それより超えてはいけない一線を越えるのか、どうすればいいのか、まともに思考も回らない中で追い詰められていく主人公の精神状態が描かれていたかというと微妙でした。
しかもずっと映像が安っぽいです。
序盤は酔うだけで面白くないです。
後半になってかなりショッキングなシーンが続きます。
それで”ああ、そうだ、これ野火だった”ってなりました。
時代背景
太平洋戦争末期のレイテ島の戦いが舞台です。
1944年(昭和19年)10月20日から終戦までフィリピン・レイテ島で行われた、日本軍とアメリカ軍の陸上戦闘である。
約2ヶ月間の戦闘でレイテ島の日本軍は敗北し、大半の将兵が戦死する結果となった。
84,006名が派遣され、79,261名が犠牲になったとされています。
ほとんどが死にました。
フィリピンの民間人も数多く犠牲となったとされています。
臭そうだし、汚いし、グロい
私が邦画の戦争映画をほとんど見ない理由は画面がずっと清潔だからです。
なんかイライラしてくるんですよね。こんなはずないだろうと。
俳優の顔に配慮してんのか、教育として使えるように全年齢対象にしたいのか知りませんが、こういう作品をもっと作ってほしいです。
実際はもっと凄惨だったんでしょうし。
本作は凄く臭そうだし汚いです。戦争映画として正面から作ろうとしている印象です。
素晴らしいと思います。
しかもあるシーンは呼吸が止まります。
結構ショッキングですし、怖いです。
これが隣り合わせだったのかと思うと本当に怖かったです。
基本情報
Fires on the Plain
野火
2015年 87分

https://nobi-movie.com/
キャッチコピー『なぜ大地を、血で汚すのか』
製作国 : 日本
日本公開 : 2015年7月25日
イタリア (VIFF):2014年9月2日
レイティング : PG-12
ジャンル:戦争 / ホラー / ドラマ
あらすじ
日本の敗戦が色濃くなった第二次世界大戦末期のフィリピン・レイテ島。田村一等兵は結核を理由に部隊を追い出され、野戦病院に送られる。しかし、食糧不足を理由に野戦病院も追い出されてしまい、空腹と孤独を抱えながら、あてもなく島をさまようことに…。
※参照元:U-NEXT
日本版 予告編
英語版 予告編
スタッフ
監督 : 塚本晋也
脚本 : 塚本晋也
原作 : 大岡昇平『野火』
製作 : 塚本晋也
音楽 : 石川忠
配給 : 海獣シアター
キャスト
田村一等兵 : 塚本晋也
安田 : リリー・フランキー
伍長 : 中村達也
永松 : 森優作
田村の妻 : 中村優子
分隊長 : 山本浩司
軍医 : 山内まも留
アワード
- 第7回TAMA映画賞:特別賞(塚本晋也監督・キャスト・スタッフ一同に対し)
- 第89回キネマ旬報ベスト・テン:日本映画ベスト・テン 第2位
- 第70回毎日映画コンクール:男優主演賞/監督賞
- 第37回ヨコハマ映画祭:日本映画ベストテン・第5位
- 第25回日本映画プロフェッショナル大賞(2016年):監督賞/ベストテン2位
- 第30回高崎映画祭:最優秀作品賞/最優秀新人男優賞
ポスター/パッケージ
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おせっかい情報
見る際の注意
グロいシーンのショッキング具合がすごいです。
内容の精神的負担も大きいです。
犬が死ぬシーンがあります。
蛆虫注意。
画面揺れが激しいので酔うかも。
こんな人におすすめ
戦争映画が好き。
この作品が好きな人が好きそうな映画
- 野火(1959年版)
- ゆきゆきて、神軍 (1987年) 122分
※完全な偏見です。
⚠️ネタバレ有レビュー⚠️
俳優の演技を殺すブレ
予算がなかったんでしょうか。
とりあえずカメラを揺らしておけばいいと思っているのかと思うくらいカメラが揺れます。
酔います。
本作は邦画にありがちな無駄なセリフがありません。
でもあんなに揺らさなくても主人公の動揺は伝わってます。
一箇所すごくいいシーンがありました。
水上でバチャバチャしているシーンから森を走るシーンに切り替わる時の揺れとシームレスさは凄かったです。
安っぽい映像
原作にあるんですよね。
”草木が私を食べてもいいよ”と話しかけている気がするっていう描写が。
それを表現したんでしょうけど、ちょっと微妙でした。
でもやりたいことはわかります。
原作ありきかもしれない
原作必読かもしれないです。
主人公は生き残るために人肉を食べようと何度も誘惑されますが、超えてはいけない一線だということで思いとどまります。
自分とは関係なくすでに死んでいる人間を食うのと、殺した鶏を食べることは何が違うのか?
すでに死んでいる人間を食べることより、生きている植物をちぎって食べることのほうがダメなんじゃないか?など自問自答しながら、今にも餓死してしまいそうな切迫した状態でサバイバルをしています。
ちょっと伝わらなかったかも。
1956年版の方が伝わってきた印象です。
音がよかった
音楽や音が効果的に使われていた印象です。
特にショッキングなシーンでは音がマジで怖いです。
そもそも理解できない
組織として全く機能していません。軍が。
物資も足りないし管理も全然されていない。
最初に主人公が切り捨てられたのも食い扶持を減らすためでしょう。
食料に困っているレベルでどう戦争しろと。
本当に杜撰過ぎるとしかいいようがありません。
あり得なさすぎるでしょ。
あんな計画性のない中で兵士を適当にレイテ島に送ったんですか。
ただのバカじゃないか。捨てるために送ったようなもんじゃん。
序盤はコントみたいだった
病院と基地を言われるがままに行ったりきたりしていました。
病院とは言えないくらい酷すぎる環境でした。
”次、入院を許可されなかったらその手榴弾で自決しろ”
嘘だろ。なんのコントだよ。
ずっと主人公の主観
だから何がどうなっているのかまるでわかりません。
状況を把握できないからずっとパニックです。
撃ってきた敵もアメリカ兵なのかゲリラなのか誰なのかわかりません。
しかも降伏もできない。
飢えていくだけです。
拷問じゃないですか。
この主人公はこんな目に遭って、よく日本に帰ってきて本を書きましたね。
こんな無能がトップに立つ国なんて滅んでしまえと思わなかったんですかね。
私なら思います。
狂った男
精神が狂っている男が発狂しながらおしっこ漏らしていました。
あんな喚かれたらアメリカ兵かゲリラ兵に見つかるかもしれないのになんで生かしておくんだろう。
あとで食料になったんだろうな。
俳優が健康そう
肌艶も良くて、健康的な体型をされていて、とてもいいことなのですが本作では他の俳優の方がよかったのかもと思いました。
俳優がどんどん痩せていっているように見えたのですが私だけですかね。
もう一度観るのはしんどいので確認はしませんが痩せていっているように見えました。
それでもこの点に関しては1956年版の船越 英二がすごすぎました。
この人は2週間断食して撮影中に栄養失調で倒れたそうなのでそこまで健康を害するようなことは絶対に誰にもやって欲しくないのですが、元々痩せ型で、逆に太れないタイプの俳優を起用して欲しかったです。
カラテカ入江みたいな体型が通常運転の俳優さんっていないですかね?
全員が死ぬか生きるか、食うか死ぬかの間にいるようには見えませんでした。
その辺に転がっている死体
常に死に包囲されています。
地元民の死体も日本兵の死体もゴロゴロ転がっています。
キッツイ。
しかも自分も死にかけ。
常に人肉を食うか自分の倫理観と戦っています。
なんか観ててずっとしんどい。
『弾の方がよう、避けてくんだよ』
本当に球が避けていくシーンがあったのは。草
別にそんな直後に伏線回収しなくても。笑
なんか神々しかったです。
一生に感じる時間
夜中に開けた道を匍匐前進で進もうとしていたとき、ライトが付いて銃撃されます。
ライトがついて、俳優が照らされながら動きが止まります。
これヘレディタリーの事故を起こした後のピーターを見た時と同じ気持ちになりました。
きつい。
にしても一斉に皆殺しにされるシーンは本当に酷かったです。
惨殺ですね。
音も血飛沫も怖い。
内臓が出てきていたり、脳みそが飛び出していたり残酷すぎる。
手足が引きちぎれていてその辺に落ちていたり、地獄絵図とはまさにこのことじゃないですか。
ここの音楽と音の演出、人体模型のクオリティが非常に高かったです。
降伏もできない
主人公が降伏しようと旗を作ったあと、降伏した兵士が殺されているのを見て死ねと言われているような気持ちになりました。
生き残る方法はどこにあるんだろう。
兵士Aの手榴弾自殺
『今日は気持ちのいい日でよかったです』
と言って自決したのは怖かった。
久々にゾッとしたシーンでした。
こうして死んでいく人もいるんだっていう。
なぜ自分の肉を食ったのか
オッサンが手榴弾を投げたとき、逃げそびれて負傷してしまいます。
自分の肉がめくれるのですが、それをおもむろに食べます。
映画では一瞬の出来事で何がなんだかわかりませんが、自分の肉を食べた理由は自分の肉だからです。
こんな加害性がなく知性のある男が、あんな酷い状況に置かれるなんて本当に酷すぎる。
本当に酷すぎる。
人肉食ってたよね
幻覚で見た現地の人たちは食べなかったから見た幻覚には到底見えませんでした。
食った人たちなのかなと思ってしまいました。
本作のラスト
もうおかしくなってしまっていました。
食事をすることがトラウマと化していました。
こんな残酷なことありますか。
餓死せずに済んで、国に戻ってきたら食事がトラウマって。
本ではあくまでも自分は食べていないという内容でしたが、人肉を食べていたとしても責める気にはなりませんよ。
とてもあの状況下で本人達を責める気になれません。
なんて心が重くなる映画だったんだろう。
もう少し予算と撮影者のセンスがあればなぁ、、、。
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