普通の人々 (1980年) 124分【ネタバレ・考察】崩壊していく完璧な家族。母性なんて最初から無い。家族地獄映画の名作。

普通の人々

ネタバレ無し感想

普通の人々でしたね。 その辺にいる人たちの話でした。
理想を他人に押し付ける悲劇。
色々なところで散見される現象ですが、本作の場合は母親がソレだったので地獄でした。
とにかくずっと苦しい作品ですが、最後は救われるのでまだ後味はいい作品だったと思います。

葛城事件の父親と、普通の人々のこの母親は意気投合しそうです。

基本情報

Ordinary People
普通の人々
1980年 124分

普通の人々

https://lecinemadreams.blogspot.com/2018/03/ordinary-people-1980.html

キャッチコピー(英語)『Everything is in its proper place…Except the past.』
製作国 : アメリカ
日本公開 : 1981年3月7日
アメリカ:1980年9月16日 (ニューヨーク)
製作費 : 600万ドル
興行収入 : 5480万ドル
ジャンル:ファミリー / ドラマ / 個人的絶頂映画

あらすじ

ボートで遠出した兄・バックと弟・コンラッドは、途中でボートが転覆し弟だけが助かる。だが、それ以来バックを溺愛していた母・ベスとの間にわだかまりが生じてしまう。父・カルヴィンは、コンラッドとべスの関係を解きほぐそうと苦悩するが…。

※参照元:U-NEXT


英語版 予告編

スタッフ

監督 : ロバート・レッドフォード
脚本 : アルヴィン・サージェント
原作 : ジュディス・ゲスト
製作 : ロナルド・L・シュワリー
音楽 : マーヴィン・ハムリッシュ
配給 : アメリカ:パラマウント映画
日本:パラマウント映画/CIC

キャスト

カルビン・ジャレット:ドナルド・サザーランド
ベス・ジャレット:メアリー・タイラー・ムーア
コンラッド・ジャレット:ティモシー・ハットン
タイロン・バーガー医師:ジャド・ハーシュ
ジェニン・プラット:エリザベス・マクガヴァン
カレン・アルドリッチ:ダイナ・マノフ
バック・ジャレット:スコット・ドーブラー
スティルマン:アダム・ボールドウィン
水泳部のコーチ:M・エメット・ウォルシュ
ジョー・レーゼンビー:フレドリック・レーン

アワード

  • 第53回(1980年)アカデミー作品賞:監督賞/助演男優賞/脚色賞/作品賞

おせっかい情報

見る際の注意

家庭崩壊系の映画です。
体力使うかも。

こんな人におすすめ

家庭崩壊系映画が好き。

この作品が好きな人が好きそうな映画

※完全な偏見です。


 

Amazon Prime Video<字幕版>

普通の人々

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普通の人々

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⚠️ネタバレ有レビュー⚠️

普遍的な現象

人って案外人の中身なんて見ていなかったりします。
見た目がいいから、若い女だから、金持ってる男だから、肩書きが教授だから、身長が高いから、胸がでかいから、そんな理由で人を好きになったりします。
ある程度、経験を積むとそんな表面的な要素より、中身が重要だと気がつけるもんですが、根っからの理想主義や完璧主義はどうも融通が効かないようです。

パワハラ・モラハラ

完璧主義や理想主義って周りを不幸にするんですよね。

ふと思い出したのは売上だけ見て、従業員の残業時間見てない経営者です。
現実的に実現不可能なノルマを従業員に科して追い詰める人。

残業時間と売上に相関関係があったら、それは単に労働時間を増やしたから売上が上がったというだけなのに、新しい俺のやり方が成功したと思ってしまうみたいな。

事実を客観的に認識できず、自分の”理想フィルター”がかかっていて、ものごとを見ているから話が通じないんですよね。

完璧主義は幼稚な思想

母親の顔

https://lecinemadreams.blogspot.com/2018/03/ordinary-people-1980.html

色々な経験をすると、人はどう頑張っても完璧にできないものがあると学びます。
そもそも完璧とはなんなんだとも思いますし。

大人になれば他人は天気と同じでコントロールできないものだと痛感するはずです。
この母親は見たところ育ちが良さそうで大した努力をせずとも人生がうまくいってしまった人のように見えます。
挫折という挫折を若いうちに経験していないような。
まだ自分のコンフォートゾーンを出れていないような気がします。

母親の理想

完璧主義

https://lecinemadreams.blogspot.com/2018/03/ordinary-people-1980.html

母親は世間的に完璧だった家族を愛していただけで、本質的には家族を愛していませんでした。
ここの価値観があまりにも私と乖離しているため全く共感できず、サイコのように見えていました。

母親の理想の家族像に、より貢献している兄の方を気に入っており、かねてより弟は愛せずにいたようです。

兄の死によってそれが明らかになるという展開でした。

母性ギャンブルに負けた人

母性ギャンブルに負けた母親のように見えます。

世の中、女は子供を産んだら自動で母性が湧いてくるという風に言われることが多いですが、私が思うに一部の女は母性機能を持っていません。

母性機能を持っている女であれば、元々子供嫌いだったとしても出産後、自分の子供には母性が目覚め”自分の子供は可愛い”と思えるのでしょう。

産んだら母性に目覚めるかもしれないと希望をかけて出産してみたものの、母性に目覚めなかったタイプなのかなと思います。
産んでみないと適正がわからないのに、産んだ後は母親という役割から逃げられないという、最悪のギャンブルに負けたのかなと思います。

バランサーだった兄

ヨットの事故

https://awardswatch.com/worst-picturebest-picture-series-cant-stop-the-music-and-ordinary-people/2/

母親が明らかに弟より兄を愛していると、この兄弟は自覚していたことでしょう。
だからなのか、この兄貴は弟をちゃんと可愛がっていたように思います。

兄貴から愛情を注がれていたから、弟もある程度、心が満たされていたんじゃないでしょうか。

弟にとっても大切な心の支えだった兄貴が、事故とはいえ自分を救うせいで死んでしまったと思ったら、まともな精神でいられるはずがありません。

誰も支えてくれない

弟は常に母からの愛情を求めていました。
にも関わらず、母は”兄を殺したのはお前だ”と言わんばかりに避け続けます。
より一層追い詰められていく弟。逃げ場がありません。

序盤からキツイ

朝食のシーン

https://lecinemadreams.blogspot.com/2018/03/ordinary-people-1980.html

序盤からなんか気まず過ぎる。なにこの家庭。
お父さんは明らかに過度に気を遣ってるし、お母さんは朝食を捨てるかね。

会話もあんなに上の空なことあるかねってくらい上の空。
アンジャッシュのすれ違いコントの元ネタこれなんじゃないかってくらいです。

嫌いな上司にやたら好かれてしまっている時の自分を思い出しました。
こんな感じです。

全員地獄

元々は4人家族で2人兄弟だったものの、兄はヨットの事故で溺死。
弟は自分のせいだと思って数ヶ月前に自殺未遂をし、精神科に入院。

母親は完璧だった長男の死を受け入れられず、世間体ばかりを気にしている。
元々次男への愛は薄いものの、自殺未遂と精神科に入院という”家庭の恥”を作った次男をむしろ憎んでいるようにも見える。

父親は気がついていて、どっちにも気を遣って生活。
いろいろ地獄。

言葉に中身がない

母親と息子

https://www.rogerebert.com/features/seeing-yourself-in-ordinary-people

表面上、音を発しているだけで全くコミュニケーションが成立していません。
というか、コミュニケーションをしようとしていません。

弟はみんな上部だけで話しているように感じているようです。

大人って自分が言いたいことを言うだけじゃなくて、自分の言葉による相手への影響や、相手が何を言って欲しいか考えながら話しますよね。
本音で話しているわけではなく、そういう役割だからというのが透けているんだよな。
みんな嘘っぽく感じて何を信じたらいいのかわからないということですね。

『あら?言ったかしら?』って2回も出てきたよ。言葉に意味がないことをこんなに強調するシーンなかなか見たことない。

徹底的に居場所がない

精神病院の方が居場所を感じたっていうのを理解してくれるかと思ったら、共感してくれなかったのですね。
自分とは違うんだと思い知るシーン結構辛い。

この子には外の世界に居場所があるんだ、居場所がなくて精神科に戻りたいと思っているのは自分だけなんだ、って思ってしまうようなシーンでした。

17歳のカルテでもあったな。
壁紙の葡萄美味しそうよね。私も食べたいわ。
っていう患者たちの中に居場所を見出してるセリフ。

弟は少しずつ兄の死を受け入れている

弟は少しずつ思い出にできているように見えます。
問題はずっと家族から逃げ続ける母親です。
なんというか、コミュニケーション出来なすぎて、ASDかと思うくらいです。

この母親はどこまで自覚しているん?
なにもしなくても、誰かが自分の欲しいものを与えてくれると思って待っているようにも見えます。
兄の死を悲しんでいるようにも見えません。
あくまでも完璧だった家庭への未練があるように感じます。
過去の栄光に浸る老人かのよう。

自己肯定感と被害妄想

自己肯定感が低い人って、被害妄想が激しかったりしますよね。

この主人公は水泳部に入っていましたが、他の部員がワイワイ騒いでいるのを見て、大部してしまいます。

元々は仲が良かったようですが、勝手に疎外感を抱いてしまったようです。
被害妄想でしかないのに。
実際、彼らはいい奴そうです。

後半、主人公が暴力を振るいますが、やられてもやり返さず、止めるだけですし、変に自殺未遂や精神病院の入院をからかったりとかもしていません。

主人公が頼ったり心を開いて歩み寄れば彼らは歓迎してくれたと思いますが、人って本当にネガティブになってしまったとき、人の優しさに気付けなかったりします。

溜め込まれた感情

爆発寸前だということを精神科医は察知したようです。
怒りの感情を抑制していたからバランスが取れてないと医師は見抜いたんですかね。

少しずつガス抜きをすれば、そんなに辛くはならないですよね。

これは私の予想ですが、幼い頃から兄貴の方が愛されていると自覚して育っていたとしたら、自分の感情を抑えることが癖になってしまっているんだと思います。
母親に好かれるように良い子でいようと常に思いながら泣きたい時に泣かずに育ったはずです。
どう自分の感情と向き合ったら良いのか、どう発散したら良いのか、経験から学んでいない気がします。

おばあちゃん怖

おばあちゃんも支えにはならないのか。
あれだけ追い詰められている主人公に対して、『厳しくすればいい』っておばあちゃん終わってんな。怖。

同性愛者を矯正学校にぶち込んで矯正させてた世代の人の価値観はやっぱぶっ飛んでますね。
精神病への理解も乏しいどころかゼロ。

まさかこの子が

カレン

https://mattlynndigital.wordpress.com/2019/01/30/four-academy-awards-and-the-film-ordinary-people/

まさかカレンが自殺するとは。
明日、君がいないでも1番明るかった子が自殺していましたね。

辛くて仕方がないという自分の感情を自分でちゃんと認識して向き合っているだけ主人公は回復に向かっているのでしょう。
自分の闇を自覚して言葉にできているし、無理して普通のフリして友達と付き合ったり、部活続けたりしなかったらからまだ自分自身に寄り添えています。

カレンのような子は自分のネガティブな感情ですら無視して明るく清らかにいようとしていたんではないでしょうか。
どうせ誰も理解してくれないんだから自分くらいは自分を受けれてあげないとキツイぞ。

てかガチでボーリング下手過ぎたシーンには笑いました。

お父さんえらい。

お父さん

https://bluray.highdefdigest.com/101912/ordinarypeopleparamountpresents.html

最後、お父さんが母親の根幹に気がついて、息子を守る選択をしてくれて安心しました。
父親がまともで本当に良かった。

なぜか泣いてしまった

精神科医とのハグ

https://www.rogerebert.com/features/seeing-yourself-in-ordinary-people

『精神科医が友人だ』って言ったところからずっと、なんか泣けたんだけど理由がわからない。
本当は母親から学びたかったけど、人に頼る方法を学んだね。

関連情報

本作はアリ・アスターが影響を受けたとされている作品です。
確かに、ジョンソン家の奇妙なことでもヘレディタリー/継承でも全く同じに見える構図が使われています。

引用元:https://nbpress.online/archives/16041

参考情報

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