ネタバレ無し感想
この映画のサントラ聞いているとメンタルおかしくなりそうになります。
いろんなタイプの恐怖が調和させており、見る人の潜在意識によって恐怖の種類が変わるような映画だと思いました。
ヘレディタリーを見ていると何か良くないものが自分にじんわり染みてきているんじゃないかという気持ちにさせます。
めちゃくちゃ好きなホラー映画なのですが、2度と見たくないです。
でも2度観ることが前提で作られている映画な気がしますし、2回目も楽しめます。
1回目観た時はただただ飲み込まれていく一方でしたが、全体の内容を把握してからの方がもっとのめり込んで怖がれます。
素晴らしい演技力
とにかく演技力が素晴らしいです。
この作品がホラーじゃなかったらトニ・コレットはアカデミーでしょう。
それぐらい感情の発露がすごかった。
感情の起伏が抑えきれずに表に出てきてしまう母親の演技とは相反してピーター役のアレックス・ウルフは抑えたところの演技力が特にすごかった印象です。
思考停止のシーンなど。
怖いのに見てしまう自分が嫌になる
本作のグロはただただリアリティに満ちていて、無駄な鮮血がありません。
しかし画面から匂いを感じるような、リアリティのあるグロです。
とにかく気持ち悪いのですが、同時に芸術作品であるかのような美しさもあります。
そして、Jホラーのような闇に何かがいるような気がするという演出。
暗すぎて見えるようで見えない。でも見えそうだからなんか集中して見てしまう。
怖いけど目が離せない。この感覚は初めて味わいました。
薄暗くて見えそうで見えない。怖いんだけど集中して見ようとしてしまう自分が嫌になります。
タイトルの意味
優秀な邦題だと思いました。
ヘレディタリーの意味は”遺伝性の”という意味だそうです。
hereditaryとは
遺伝(性)の、遺伝的な、世襲の、親譲りの、代々の引用元:https://ejje.weblio.jp/content/hereditary
継承されていましたね。
基本情報
Hereditary
ヘレディタリー継承
2018年 127分
キャッチコピー『完璧な悪夢』
製作国 : アメリカ
日本公開 : 2018年11月30日
アメリカ:2018年6月8日
製作費 : $10,000,000
興行収入 : アメリカ・カナダ:$44,069,456
世界:$81,263,489
日本:1.3億円
レイティング : PG-12
ジャンル:ホラー / ファミリー / 個人的絶頂映画
あらすじ
グラハム家の祖母・エレンが亡くなった。娘のアニーは夫・スティーブン、高校生の息子・ピーター、人付き合いが苦手な娘・チャーリーと共に悲しみを乗り越えようとする。だが、アニーたちはエレンから忌まわしい“何か”を受け継いでいたことに気づかず…。
※参照元:U-NEXT
日本版 予告編
英語版 予告編
スタッフ
監督 : アリ・アスター
脚本 : アリ・アスター
製作 : ケヴィン・フレイクス/ラース・クヌードセン/バディ・パトリック
音楽 : コリン・ステットソン
配給 : アメリカ:A24
日本:ファントム・フィルム
キャスト
アニー・グラハム:トニ・コレット
スティーブ・グラハム:ガブリエル・バーン
ピーター・グラハム:アレックス・ウルフ
チャーリー・グラハム:ミリー・シャピロ
ジョーン:アン・ダウド
アワード
- 2018年シカゴ映画批評家協会賞:最優秀女優賞/最優秀監督賞
- 2018年デトロイト映画批評家協会賞:最優秀女優賞
- 2018年ゴッサム・アワーズ:最優秀女優賞
- 2018年セントルイス・ゲートウェイ映画評論家協会:最優秀女優賞
- 2019年ファンゴリアチェーンソー賞:最優秀ワイドリリース賞/最優秀監督賞/最優秀女優賞/最優秀助演男優賞/最優秀脚本賞/ベスト・キル(チャーリー)
おせっかい情報
見る際の注意
虫注意。
リアルグロ注意。
鳥がひどい目に遭います。
子供がひどい目に遭います。
こんな人におすすめ
ホラー映画好き。
この作品が好きな人が好きそうな映画
※完全な偏見です。
⚠️ネタバレ有レビュー⚠️
メメントかよ
この映画、まさかの最初からネタバレしていました。
ミニチュア・ハウスにズームしていったら実寸大の部屋になったシーンで、最初から何かに操られていることを示していますね。
序盤のピーターが受けていた授業でも、
先生『主人公が致命的な欠点により破滅するという法則に当てはめるとヘラクレスの欠点は何か?』
生徒『傲慢さ。』
先生『どうして?』
生徒『ヘラクレスは目の前に差し出されたいろんな兆候を全部無視したから。』
先生『なるほど、彼は支配権を持っていると思っているわけだ』
先生『彼に選択肢があった場合、悲劇性は低くなるのか、高くなるのか?』
生徒『悲劇性は増す。逃れられない運命なら希望がないから。登場人物たちは仕組みの中の駒でしかない。』
この映画の話じゃん。
この映画から伝わってくる恐怖
遺伝する恐怖
世の中には遺伝性があると言われている疾患がありますよね。
この映画ではアレルギーや統合失調症の遺伝について描かれているのかなと思います。
統合失調症の遺伝について
世界保健機関(WHO)によると、統合失調症の一般的な発症割合は、地域によって多少の差はあるものの、平均すると約1%の発症リスクとなっています。
統合失調症の親や兄弟姉妹がいる場合における発症の確率は、約10%と言われます。また一卵性双生児の1人が統合失調症だと、もう1人の発症リスクは約50%と言われています。このように、患者さんと遺伝的に近い人ほど、発症の確率は高くなるものと考えられます。引用元:https://osakamental.com/symptoms/schizophrenia/
アレルギーの遺伝について
アレルギーは遺伝要因と環境要因が組み合わさって発症します。アレルギー素因、つまり体質的なアレルギーのなりやすさは遺伝します。引用元:https://yallergy.yamanashi.ac.jp/ynavi/a_id-354
明確にオカルトにしないと描けない題材
もしかしたら自分にも遺伝してしまっているかもしれない。
薄くでもDNAに情報が入っているかもしれない。
そういう恐怖を与えようとしている作品でした。
一歩描き方を間違えてしまえばナチの優生思想に傾倒してもおかしくない危ういテーマです。
本作では悪魔崇拝というカルト集団による策謀が実際に描かれていましたが、少し脚本を変更すれば統合失調症が遺伝してしまい家族が分断され崩壊していくホラーにもなったと思います。
シャイニングも見方を変えれば統合失調症の話にも見えなくもないです。
本作では明確に遺体が宙に浮いたりポルターガイストが起きたりしているのでオカルトで確定です。
愛せなかった時の恐怖
母親にはなったものの、もし自分に適性がなかったら。
産んだはいいものの愛情を感じなかったら。
子供は嫌いだけど自分の子供は可愛いとはよく聞く話ですよね。
女は出産後、ホルモンの変化が起こるから子供を愛せるようになると。
でももし、その通説を信じて産んではみたものの、愛せなかったとしたら。
『おばあちゃんが死んだら、誰が私の面倒を見るの?』
娘は母親から愛情を感じていなかったんでしょう。
アニーは最善を尽くそうと努力はしていましたが子供達を心からは愛せていないんでしょう。
この”母性ギャンブル”で負けた母親のように見えます。
母性ギャンブルで負けた女の苦悩はめぐりあう時間たちのローラという登場人物によって描かれています。
絶対的に逃れられないもの
家族と遺伝ですね。
自立し、自分で稼げるようになれば家族と縁を切ることも容易いでしょう。
でも親から遺伝したものからはどれだけ憎んでも自逃れる方法はありません。
DNAへの恨みの解決法は死ぬしかない。
もし家族を愛せなくなってしまったら
本作では兄のピーターが運転していた車の事故により妹のチャーリーが死んでしまいます。
もし自分の家族でこんなことが起こってしまったら、息子へ今までと同じ愛情を持ち続けられますか?
心のどこかで、息子に殺されたという感覚は生まれてしまうんではないでしょうか。
自分の中で抱える愛憎に苦しむことになるわけですね。
もし自分が殺してしまったら
息子としても地獄です。
家族に今後どのように接したらいいのかわかりません。
不慮の事故だったとしても、自分を責めずにはいられません。
自分の愛する家族の命を自分で奪ってしまったという呪いからは一生逃れられない人生を送ることになるでしょうし、他の家族とも以前のような関係性には二度と戻れないでしょう。
どこにも居場所がありません。
チャーリーの障害
明確に言及はされていませんが、どうやらチャーリーは発育が他の子と比べて遅いように感じます。
年齢は後半に言及されますが13歳だったそうです。
母親に似て、何かを作るのが好きなんでしょう。
工作遊びをしていますが、クオリティが小学校低学年が作る作品のようです。
絵のクオリティを見ても、13歳の絵には見えない下手さです。
あともう一点気になったのは
『あなたは生まれたとき、泣かない子供だった』
というセリフです。
自閉症の赤ちゃんはあまり泣かないです。
人数少ない?
チャーリーが通っている学校のクラスめっちゃ人数が少なくないですか?
お家の感じからして都会ではなさそうな感じはしましたが兄のクラスは倍くらい人数いますよね。
もしかして特別学級?
邪気にされる障害児
パーティーに連れていけと押し付けていましたね。
結局、パーティに連れて行ったけど明らかに邪魔者扱いをしていました。
家族に邪魔者扱いされた結果、チャーリーは事故にて死ぬことになってしまいした。
序盤の会話でわかりますが、チャーリーは母親に愛されていないと感じていますし、心を開いていません。
アニーは育てにくい娘をおばあちゃんに押し付けたとも見て取れます。
チャーリーは明らかに自分が母親と兄から邪魔者扱いされているのを自覚しています。
だからパーティーでケーキを食べてしまったとき、”これナッツ入ってるかも”って顔をしてましたね。
その時点で兄に報告していれば、まだなんとかなったかもしれない。
でもチャーリーは水をたくさん飲んで自分で対処しようとしていました。
ものすごく嫌な映画じゃないですかこれ。
宗教二世の人も怖かったのでは
カルト宗教や新興宗教の2世の人はまた別の恐怖を感じていたのではないでしょうか。
親が変な宗教に入っていて、自分も苦しめられたけどせめて自分の子供達は守りたい。
でもすでに家は包囲されて蜂の巣状態であるという。
運命論的な恐怖
映画の中の登場人物達の運命は脚本が完成した段階で決まっています。
そしてその外にいる我々の人生も、何をどう足掻いても結末が決まっているのかもしれません。
この映画では起こることは起こるべくして起こる。
そしてその出来事はそれまでの選択を変えたとしても逃れられないという捉え方をしているようです。
人生は変えられないと。
過去だけならまだしも、未来も変えられないという地獄の映画です。
悪魔ペイモン
悪魔の目的
わかりません。それがまた怖いです。
この世に肉体を持って降臨したいというのは分かるのですが、降臨して何をする気なのかまるでわからないし、この映画を見てもこの先に何が起こるのか、まるで想像がつきません。
捧げ物(生首や魂)を集めるんでしょうか。
とにかく男体に入り込みたいということらしいです。
そして降臨の儀式には生首が必要なようです。
一応、ペイモンは財宝を与えてくれるらしいです。
ラストシーンでペイモンを崇めているとき、
『名誉と財産をもたらし、人々を従わせろ。私たちがあなたに従うように』と言っていました。
悪魔はずっと肉体を探していた
ペイモンの場合は性別が一致していないと人格は乗っ取ることができないみたいですね。
おばあちゃんも娘も完全に人格を乗っ取られているようには見えていませんでした。
恐らく男体でないと互換性がないんでしょう。
つまり、男体が必要であると。
ペイモンの移動遍歴
ペイモンが能力を最大限発揮させるためには男体が必要であるため、おばあちゃんは自分の息子(アニーの兄)にペイモンを入れようとしたみたいです。
『兄は統合失調症で母の寝室で首吊り自殺』
アニーの兄は遺書に『母さんが僕に何かを招き入れた』と残していました。
明らかにペイモン入れようとしていましたね。
アニーのお父さんはアニーが赤ん坊の頃に妄想性のうつ病を患って餓死とされているので一筋縄ではいかないですが、おばあちゃんが何かしたように思えてなりません。
箸休め的な感じでペイモンはおばあちゃんの中に入っていましたが、死期を悟ったおばあちゃんはチャーリーにペイモンを移して死んでったみたいです。
本作では描かれていない”悪魔に人格を乗っ取られる”過程がわかりやすく描かれている作品があるのでおすすめしておきます。
恐らく、悪魔に人格を乗っ取られるというのはこんなイメージなんじゃないかなと思います。
クラウン (2014年) 100分【ネタバレ・考察】ピエロのコスチュームに父親が乗っ取られる。切なく悲しいB級低予算ホラー。
そしてたまたま悪魔と乗っ取られた側の人格が上手く融合した場合の作品はこちらです。
テリファー 聖夜の悪夢 (2024年) 125分【ネタバレ・考察】おもてなし100%のB級ホラー映画。ホラー映画好きを満足させるためだけに作られた強烈な名作。
少しずつ崩壊していく家族
ピーターの父親は誰
アニーは夢の中で
『あなたを産みたくなかった』
と言っていましたね。
ピーターを産みたくなかったのに母親に産まされたと言っていましたね。
あとどうみてもピーターだけ明らかに人種が違いますよね。
隔世遺伝の可能性もありますが、私なら確実に自分だけ本当の子供じゃないんじゃないかと思ってしまいます。
産まされたと言っているので何か仕組まれて生むことになったのではと思いました。
結果的にアニーはピーターを産みますが、そこから絶縁しているのでこの妊娠の闇は深いです。
産まされたピーター
おばあちゃんはひとまず自分にペイモンを入れておきましたがずっと自分の血筋を引く男体を待ち望んでいます。
アニーにピーターを無理やり産ませて、ピーターを使おうとしていたようですが、あまりに支配的であったためにアニーとスティーブンが不干渉条約を作って遠ざけましたね。
それからしばらくは絶縁していたようですが、罪悪感に駆られていたみたいです。
そしてチャーリーが生まれた時、不干渉条約を緩くしたら、まるで自分の娘であるかのように可愛がったと。
それでより一層、罪悪感を抱いているようでした。
娘ならまだ大丈夫となんとなくわかっていたんでしょうか。
それとも障害を持っていることがわかって世話を押し付けていたんでしょうか。
おばあちゃんの障害
解離性同一性障害(多重人格)で認知症だったそうです。
気分がいい時は暖かく愛情深いが、凄く頑固で”あなたの意見であってあなたが間違っている”という人だった。
悪魔の時とおばあちゃんの時があったということですね。
おばあちゃんの遺言

ヘレディタリー継承
スピリチュアリズムの本にアニーへのメッセージカードが遺されていました。
『愛しのアニーへ。
あなたに伝えられなかったことのすべてを許してください。どうか私を憎まないで。
失うものに絶望しないで。最後にはその価値があったことがわかるわ。
私たちの犠牲は、その見返りに比べれば色あせるほどよ。
愛を込めて。ママより。』
全て計画済みだったみたいですね。
アニーが抱いている罪悪感
このミーティングではアニーの言っていることがよくわかりません。
アニー自身もわからないと言っています。
家族の精神疾患を告白したのちに、自分も夢遊病であることを告白し、罪悪感を抱いていると言っていました。
『家族を苦しめたくない。自分のせいだと、自分のせいではないのに責められていると感じる。』
自分ではコントロールできない要因で家族を不幸にしてしまったと思っているんでしょうか。
本作でいうところのペイモンの血筋ということでしょうか。
特に母親は子供を体の中に入れて育むので、仮に障害児を産んでしまった場合は自分を責めるのでしょうか。
自分のせいで子供に負の要素が遺伝してしまったら自分を責めるのでしょうか。
健康に産んであげられなかった自分を恨むのでしょうか。
誰のせいでもないのに。
または自分が身代わりになれればよかったのにと思っているということでしょうか。
3人で心中しようとした
アニーは過去に夢遊病で子供達と心中を図りました。
恐らくこの時にもペイモンの気配を近くに感じたために、逃れようと思って心中を計ったんじゃないかと思います。
後半、チャーリーと話したくて降霊術を行っていました。
恐らく、これはペイモン召喚の儀式なんでしょう。
この儀式を行った直後にも悪夢を見ています。
そして、その悪夢の中では2人とも燃えています。
アニーは無意識的に悪魔の支配から逃れようと必死です。
蚊帳の外の父親
父は悪魔の血が入っていないので何かを感じたりすることはありませんが、父親の立場になってみても地獄です。
娘を失い、母親は気が狂い、息子は母親によって追い詰められ精神異常を起こしている。
でもこの映画の中で、唯一、父親だけが家族に質問を投げかけ続けています。
『大丈夫か?』『どこ行ってたんだ?』と相手を気に掛けています。
逆にアニーから家族へ質問したことは一度もありません。
父性と愛情に溢れたこの父親によって家庭のバランスは保たれていたようです。
抵抗しようとする女性陣
明確に悪魔によって何かが起きているとは誰も明確に自覚していないみたいです。
しかし、アニーはずっと潜在的に抵抗しているように思います。
子供達と焼身自殺を図ろうとしたり、娘は鳥の首を捧げようとしたり。
チャーリーは最初に奪われるのが自分の首であると潜在的に意識していたんでしょうか。
悪魔は新興宗教
精神を弱らせ、肉体を弱らせ、本人のアイデンティティが弱りきった隙を狙って入り込んでいました。
この手法はテリファー3やウィッチでも描かれていましたね。
悪魔のやり口はまるで新興宗教みたい。
まるで永遠のように感じたトラウマシーン
ピーターが急いでチャーリーを病院に運ぶぼうとして100キロくらい出していましたね。
アナフィラキシーショックで喉が腫れて息ができなくなっているチャーリー。
少しでも酸素を取り込もうと思い切り車の窓から顔を出していました。
すると鹿の死体が道路に横たわっており、ピーターはそれを避けるために方向転換。
ペイモンの印が書かれた電柱にチャーリーの頭がクリティカルヒットし、一瞬にしてなくなってしまいました。
このシーンの精神的トラウマレベルはかつてないほど。
その一瞬が、まるで永遠のように感じさせるあの地獄の顔面ドアップ。
呼吸が止まりました。
あの時は私もピーターと同じく思考停止しました。
母親?警察?救急車?即死だ。そんな思考が走馬灯のようによぎりました。
一瞬、バックミラーで後方を確認しようとしていましたがピーターは直視できませんでした。
そして誰にも言えず、一睡もできない。
追い討ちをかける悲鳴
朝になり、母親が発見するチャーリーの遺体。
鳴り響く悲鳴とピーターの顔。
道路に放置されたままの、蟻が集るチャーリーの生首。
『私も死んでしまいたい!チャーリー!』
それを部屋の外で立ち尽くして聞いているピーター。
葬式でも泣き崩れるアニー。
支える父親、いまだに現実を受け入れられず立ち尽くすピーター。
一言も発していないピーターの気持ちが手に取るようにわかって体に力が入りませんでした。
トラウマによる発作
この後、ピーターは学校でバックミラーの幻覚を見たり、家に帰る前に心の準備必要なほど精神的に追い詰められてしまっていました。
ピーターが友達とマリファナを吸っている時、発作のようなものが起こり、友達に手を握ってもらっていました。
アレルギー反応と言っていますが、パニック発作のように見えました。
チャーリーの事故の時もマリファナを吸っていたのでそれがトリガーとなって発作を起こしたように見えます。
地獄の食卓シーン
こんなひどい食卓シーンは人生で見たことがありません。
しかしかなりのリアリティで映されるのでノリに焼きついて離れません。
ピーターの立てる食事音がいちいち癇に障っているんだろうなと伝わります。
そしてピーターは父親に対して食事を作ってくれたことへの感謝を示します。
それを鼻で笑うアニー。
『母さん僕に言いたいことあるんだろ?』
『あんたこそ言いたいことがあるんでしょ?』
最悪のヒステリーシーン
『育ててやってんのに、あんたがあたしに向けるのはそのクソみたいな表情』
父親には感謝を述べるのに私には向けないじゃないということでしょうか。
愛情はないものの、責任を果たそうと努力してきた母親の感情に思えます。
『あんたは向き合おうとしないし謝りもしないから私は受け入れないし許さない。チャーリーは無駄死にね。それを乗り越えて家族の絆が深まることもなく、彼女は永遠に命を奪われただけ』
マジか。息子が運転していたのは事実だけど、あれは事故なんだよ。
息子を愛していない母親の言動でずっとヒリヒリします。
もう、これは修復は不可能
『母さんは僕だけを責めているけど僕だけに責任があるのか?チャーリーをパーティーに無理やりいかせたのは母親じゃないか』
と息子も反論します。
そりゃあそうよ。ピーターの精神だって既にズタボロなので自衛しないとね。
ここまで崩壊してしまった関係性はもうダメだね
怒りに満ちた『Fine』が凄い。
こんな映画観たことない。
ペイモンのラスボス、アニー
なぜおばあちゃんはアニーにペイモンを入れなかったのか?と思ったんですが、アニーは結構強いみたいですね。
潜在的にずっと悪魔と戦っているように見えていましたし、無自覚的にずっと悪魔を拒否しているように見えます。
そのせいでおばあちゃんはアニーに悪魔を入れることはできなかったのでしょうか。
初めてジョーンと会った時
『my daughter was killed』と言ってましたね。
”殺されたんじゃなくてあれは事故だったのに”と、自分でも驚いたような素振りを見せていました。
少しずつ悪魔に取り込まれているようです。
悪魔にとって、アニーがラスボスのように見えます。
直で息子に行けばいいのにと思いましたが、恐らくアニーが今までもずっと無意識的に阻止してきたんでしょう。
この乗っ取り計画はアニーを陥落させることが必須条件となっていたみたいです。
降霊術ではなく召喚の儀式
”使者からのメッセージ”という集会のハガキがアニーの家に届いていましたよね。
その後にアニーが画材か何かを買ってお店から出てきたとき、ジョーンに話しかけられて、降霊術について話していました。
ハガキを送ってもリアクションがなかったからジョーンが直接赴いたように見えました。
ジョーンがアニーに教えたのはペイモン召喚のための儀式の一環なんでしょう。
だから念押しで『家族が家にいる時にやってね。息子さんも必ずね』って言ってたんですね。
事前に息子との関係性が悪化していると聞いていたからそういったというふうにも捉えられますがピーターの体目的ですよね。
地獄の扉よ、開け
ということはあの降霊術で準備はできたということね。
授業中、ピーターは光を見てましたね。
近くにペイモンがうろついているということでしょう。
その後具合悪くして父親に電話してましたね。
『復讐しにきた霊に纏わりつかれているとピーターが言っている』
ピーターかわいそうに。
父親しか味方がいません。
留守電で沸点が爆発
スティーブンに電話でブチギレたあと、ギャラリーの人から電話がかかってきていました。
出ることはなく、留守電に入れている声が流れます。
『手伝えることはありますか?延期しても大丈夫ですよ』
ってギャラリーの人めっちゃ優しい。
このメッセージを聞いて発狂し始めるのはなんでだ。
作品を壊すのは決められた運命への抵抗ということなんでしょうけど。
にしても背中だけで怒りを表現できるのが凄いし怖い。
ジョーン
三角を作って、ピーターの写真を真ん中に置いて何かの儀式をしていました。
そしてランチタイムのピーターに呪文を唱えていましたね。
『出ていけ!』
ペイモンが入るからピーターの人格は消え失せろということですね。
ジョーンのテーブルにはチャーリーが遊んでいたおもちゃもあったのでチャーリーも降霊させて何かやっていたっぽいです。
乗っ取りが始まったピーター
ジョーンに出ていけの呪文をかけられたあと、ピーターは教室で乗っ取られてしまいます。
光を見た後に手を挙げ、顔を歪ませて机に顔面を叩きつけます。
”出ていけと言っているだろ!”と言わんばかりです。
そしてあの手の形ってペイモンが持ってた杖みたいな手でしたね。
ダークナイトのジョーカー取り調べのシーンを思い出しました。
謎のシステム
スケッチブックのシステムが謎です。
最後に持っていた人を焼くのかと思っていたのですが違うみたいです。
いつスティーブンにリンクしたんだろう。
玄関マット
あれはおばあちゃんの手作りみたいです。
最後にチャーリーとアニー宛のマットも出てきましたね。
でもチャールズと書いてあったのでワンチャン男の子として育てればペイモン騙せんじゃね?と思ってた可能性あります。
怒涛のラスト
アニーが悪魔に乗っ取られてからは怒涛ですね。
自分の家が自分の家じゃないみたいな撮り方でした。
最初観た時はすごくドキドキしていたのですが、2回目みた時は笑いが止まりませんでした。
ピーターが目を覚ました後ろで、母親が浮いた状態で泳ぐみたいな動きを移動してました?笑
ピーターが父親の焼身遺体を見つけて泣いているとき、後ろの天井に張り付いてんの笑った。笑
吉田沙織じゃん。笑
屋根裏に逃げたピーターを追ってスーパー・ヘドバンしたのにも笑った。
首なしアニーの遺体が浮いてツリーハウスに登っていくのもシュール。笑
トラウマシーン
宙に浮いて糸鋸で自分の首を切るアニーはマジで怖い。
音が最悪です。
よくわからないシステム
ピーターに王冠を被せて『大丈夫よ、チャーリー』と言っていました。
ん?ペイモンが入っているんじゃないん?
チャーリーをかまして、ペイモンが入っているということ?
変換アダプタみたいなことしてる?
ペイモンは無
どんな気持ちなんだろう。
ようやく復活できたというような感情なのだろうか。
謎の開放感
ピーターがペイモンになったとき、
『あ、やっとこの地獄から解放された』
という気持ちになってしまいました。
私も侵食されたかのようで、この感覚を持ってしまったこと自体が怖い。
統合失調症の言動にも見えてしまう
ジョーンがピーターに呪文をいうシーンとか。
『何を見たのか知らないけど今行っていたことをお父さんには言っちゃダメよ。これを止められるのは私だけなの。』
と悪夢を見た息子にいうシーン。
あと最後にスティーブンにスケッチブックを燃やして欲しいと説明するシーン。
ずっと包囲されている
序盤のシーンで息子がマリファナを吸っているとき、窓の外から誰かが覗いている映像がありましたね。
アニーは母親の部屋のドアが勝手に開いていると言っていました。
夜から朝に移り変わるシーンでは全裸の男女が家を取り囲んでいたし。
降霊術をやろうとしたとき、寒いからといってお父さんが窓を閉めようとしましたが、アニーが阻止しました。
降霊術では窓を開けないといけないと。
これ外で誰かが成功したか見張るためなんじゃないか。
おばあちゃんの遺体を勝手に屋根裏に運ばれていたし。
鍵持ってるね。
最後は家のあちらこちらに全裸で立ってましたね。
敢えて得体の知れない悪魔を作品に召喚。
かなりマイナーな悪魔のようです。
呪文のような言葉が作中で出てきますが、実際に何かあるわけではなく、作品オリジナルであるかと思います。
多分、有名なだったらここまで怖い映画にはならなかったと思うのでそこのセンスもすごいなと思いました。
”得体の知れない何か”というのが本作のいいところですね。
エンドロール
血のように赤いアルファベットの文字が下に次から次へと継承されていくスタッフロールのセンスも完璧ですね。
あんなもん見せられて明るく爽やかな音楽とかふざけんなと思いました。
しかもこれコーダあいのうたで使われていた曲ですね。
関連情報
心地よくて気づかないうちに何かに取り込まれそうになる曲
Hereditary Soundtrack – “Reborn” – Colin Stetson
これ聴き続けてたら怖くて涙出てくるかもしれない曲
Hail, Paimon!
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