ネタバレ無し感想
統合失調症・ブラックコメディ映画。
思ったより面白かった!なんか見たいけど観るものがなくて困っている人にお勧めしやすいです。
イメージが映画の内容とマッチしているナイス邦題&パッケージでした。
アイディア一本勝負の空っぽ脚本ではありませんでした。
ただ、コメディ色はちょっと薄めで、グロはほとんどないです。
観てよかったです!ただ最後は悲しい気持ちになる作品でした。
基本情報
The Voices
ハッピーボイス・キラー
2014年 104分

https://www.npr.org/2015/02/05/383558287/in-the-voices-the-dog-and-the-cat-talk-but-the-film-says-little
キャッチコピー『キュートでポップなサイコなジェットコースタースリラー!』
制作国 : アメリカ
日本公開 : 2015年9月19日
アメリカ(サンダンス映画祭): 2014年1月19日
アメリカ:2015年2月6日
制作費 : $11,000,000
興行収入 : $2,224,585
レイティング : PG12
ジャンル:ホラー / コメディ / スリラー
あらすじ
風変わりな青年、ジェリー・ヒックファンはしゃべるペットの犬と猫にそそのかされながら、精神科医・ウォーレン博士の助けを借り、真っ当な道を歩もうとしている。ある日、ジェリーは職場で気になっている女性・フィオナにデートをすっぽかされ…。
※参照元:U-NEXT
予告編
日本版 予告編
英語版 予告編
スタッフ
監督 : マルジャン・サトラピ
脚本 : マイケル・R・ペリー
製作 : マシュー・ローズ/アディ・シャンカル/ロイ・リー/スペンサー・シルナ
製作総指揮 : クリストフ・フィッサー/ヘニング・モルフェンター/エリカ・ポートノイ/チャーリー・ウォーケン/キャシー・シュルマン/アダム・ストーン/ジョン・パワーズ・ミドルトン/ダグラス・セイラー・Jr
音楽 : オリヴィエ・ベルネ
配給 : アメリカ:ライオンズゲート
日本:ポニーキャニオン
キャスト
ジェリー :ライアン・レイノルズ
声 – ボスコ(犬)、 Mr.ウィスカーズ(猫)、鹿、バニー・モンキー: ライアン・レイノルズ
フィオナ :ジェマ・アータートン
リサ :アナ・ケンドリック
ウォーレン博士 :ジャッキー・ウィーヴァー
アリソン :エラ・スミス
デニス・コワルスキー :ポール・チャヒディ
ウェインバッカー保安官 :スタンリー・タウンゼント
ジョン :アディ・シャンカル
デイヴ :サム・スプルエル
ジェリーの母 :ヴァレリー・コッホ
ジェリーの継父 :ポール・ブライトウェル
ジェリー(12歳) :ガリヴァー・マグラス
おせっかい情報
見る際の注意
ちょっとだけグロいシーンありますが、耐性がない人でも見れるレベルだと思います。
こんな人におすすめ
なんか見たいけど観るものがなくて困っている人。
ホラー初心者。
この作品が好きな人が好きそうな映画
- ハウス・ジャック・ビルト
※完全な偏見です。
⚠️ネタバレ有レビュー⚠️
よくできたキャラクター造形
この人いそう、と思わせるのはライアン・レイノルズの演技力なのか脚本の作り込みなのか。
どっちもですね。説得力があります。
主人公が患っているもの
ジェリーの母親もジェリーと同じ症状に苦しんでおり、統合失調症。
遺伝性した可能性があり。
教科書的には、統合失調症の一卵性双生児の発症一致率が50%、患者の親から生まれた子供の発症率は10倍に上昇するなどの事実から、遺伝の関与が 強く示唆されている。実際にも、患者が多発する濃厚家系があちこちに存在する。
引用元:https://www.bri.niigata-u.ac.jp/research/column/000121.html
ジェリーに関しては会話の違和感も多々あり、ASDも持っていそうす。
疫学研究でも両者の関連は言われており、自閉スペクトラム症(ASD)患者は健常者と比較して3〜4倍ほど統合失調症の有病率が高いこと、そして、統合失調症を家族歴に持つ方のASD有病率の高さも判明しております。
引用元:https://meiekisakomentalclinic.com/blog/2108/
ASDと統合失調症は、精神症状による精神医学的な診断基準により、異なる疾患として区別されていますが、最近の疫学研究からは、両疾患の病因・病態はオーバーラップしている可能性が示唆されています。
引用元:https://www.amed.go.jp/news/release_20180912.html
さらに母親の自殺や虐待を受けて育っており、トラウマや心の傷も抱えている。
脳も心もかなりボロボロの状態じゃないか。
薬と現実
ざっくり調べた感じですが、統合失調症は脳のドパミンが過剰分泌されてしまうことが原因で幻覚・幻聴が起こるみたいです。
主には幻聴が多いらしいですが、幻聴か現実か区別がつかないくらいハッキリと聞こえるみたいですね。
ビビったんですが、覚醒剤を使っているときもドパミンが過剰分泌されるらしいです。
統合失調症はナチュラル覚醒状態。
心を守るために現実逃避していたんでしょうね。
あと最悪なのが、ASDの人って嫌な記憶がずっと忘れられずに反芻してしまったりするみたいです。
マジでどんな呪いだよ。
発達障害を持つ人は、フラッシュバックを起こしやすい傾向にあります。
それは、発達障害の特性による苦手の多さ、白黒思考、感覚過敏、対人不安の強さなどからトラウマが起きやすいことが関係しています。
引用元:https://kodomo-plus.co.jp/column/2246/
ジェリーはあくまでも映画的なキャラクター
実際の統合失調症患者や発達障害の人たちが攻撃性が高いかというと、そうでない人とあんまり変わらないのではと思います。
統合失調症の患者が持つ幻聴は自分が批判されているような声ということが多く、他人への攻撃性がない場合がほとんどだそうです。
本作のように映画で使われたりすることが多いので勘違いされがちかもしれません。
ジェリーの状況
上司が『裁判所にいい報告をするよ』と言われていたので社会復帰したてっぽい。
少年時代の母親の件で精神病棟にいたのか、あの後に何か問題を起こして刑務所or精神病棟にいたのかは不明。
ジェリーは職場での勤務態度に問題があるようには見えなかったにも関わらず、職場の女性陣が変に余所余所しかった。
そして単純作業をしているっぽかったので、もしかしたら障害者枠などの採用なのかもしれない。
精神科に通い、カウンセリングを受け、毎日欠かさず薬を飲むように指導を受けている。
指導に従わなかった場合は刑務所に戻されるか、刑務所に入るかわからないけど、またぶち込まれるかもしれないらしい。
フィオナを殺した後、車に遺体を乗せたままの状態である警察官と世間話をしていましたが、やっぱり何度かお世話になっているっぽいですね。
憎めないジェリーの性格

https://ktswblog.net/2019/10/09/the-voices-the-saddest-movie-ever-that-explains-the-battle-of-mental-illnesses/
ポジティブで人を恨まず、明るく積極的に人と関わりに行こうとする性格。
孤独によって社会を恨んでいるわけではなさそう。
根の性格がいいからなのか、そこそこ女性からモテるからなのか、インセルにはなっていないみたいです。
序盤で音響を任された時も嬉しそうだし、会議でも積極的に人と関わろうとしている。
ちょっと空気は読めないけど、みんなと仲良くなりたいという気持ちが伝わりますね。
ポジティブでやる気に満ち溢れた男性。
どこか魅力的で、コミュニケーションの空回りも可愛いく見える。
フィオナにすっぽかされたとき(ジェリーがメッセージを確認していなかっただけ)も、怒ることなくずぶ濡れのフィオナを車に乗せてあげていた。
自分の車が汚れることなんて気にも止めていない様子。
ペットたちへの餌やりが彼の中で欠かせないルーティン(当たり前のことだけど)となっている点からしても、他人への思いやりがある性格のように思える。
その点、インセルとは違う風味を感じる。
これらの根っこの人間性を感じてしまうので、なんとかこの人を救ってあげられないのかと思ってならない。
欲求と理性
あの動物たちは全部俺の声なわけだ。
猫と犬がまるで悪魔と天使かの如くジェリーに話しかけているが、それはまるでジェリーの欲望と理性の言い合いに見える。
まるで構図は悪魔と天使が自分の背後で言い合いをしている様。
ジェリーは明確に殺人欲求があるサイコパスの様子。
人を殺している時に生きている実感を感じるらしい。
母親の自殺の影響で苦しんでいるなら早く殺してあげたいという善意によってついついフィオナをぶち殺してしまった。
その事件を隠蔽するために、2人目、3人目と殺人を繰り返し、取り返しがつかない状況まで追い詰められてしまった。
理性があり、自分の異常性も自覚していそう。
パニックになってコントロールできないみたいになってる。
子供の頃からの特技
恐らく、彼はひとりっ子で、軍人の父親は家を空けることが多いですよね?
ベルリンから移住してきたって母親だけでしたっけ?ジェリーはベルリン生まれなんでしたっけ?
母親も入院を繰り返していたようだし、ジェリーは幼い頃から今までずっと孤独の中で生きてきたのかと思います。
そしてフィオナの死体を見た時、にっこり嬉しそうに笑っていたのは、子供の頃のイマジナリーフレンドを思い出したんじゃないかと思いました。
動かないぬいぐるみ。自分の心を癒していた空想上の友達。
この映画、アジア贔屓?笑
インド人がなぜか寿司へ情熱があり、ピザをバカにする。
多様性ギャグ。笑
ジェリーがフィオナを最初にデートに誘ったのも中華料理屋だし。
カラオケもしているし。
アジア文化が盛んなエリアなのかな?
ちょいちょいアスペを発動
最初のカウンセリングのシーンですが、先生に薬の効果はどうかと聞かれてI don’t knowしか答えないのは嘘が下手くそすぎて草。
飲んでないの一発でバレるやん。
同僚に『うるさいぞ!』と怒られた時、
ジェリーがいったセリフ、
『あなたの髪型最高だね、後ろのところふさふさ』には悪意や皮肉はこもってないんだと思います。
多分、相手を褒めてなだめようとしたんですよね。

https://alarencontreduseptiemeart.com/the-voices/
1人だけ男、1人だけ楽しそう
ジェリー『経理部に遊びにきてって言ってたよね』
フィオナ『うそ、私そんなこと言ってない』
これは幻聴だったみたい。
このあと同僚達のディナーに行ったとき、あきらかに会話が弾んでいませんでしたね。
内容は映されませんでしたが、空気の悪さがあからさますぎました。
相当、素っ頓狂なコミュニケーションを繰り返して、場が冷え切ったんだろうなと容易に想像できます。

https://bollalmanacco.blogspot.com/2019/10/the-voices-2014.html
『お腹減った』って言ったフィオナに対して『クラッカーならそこに入っている』
やっぱ会話がおかしい。めちゃくちゃ優しいんだけど、そういうことじゃないのよ。笑
私の知り合いのASD男性も悪意なく人が不快になるような発言をしてしまい、
“俺またなんかやっちゃったかも”みたいなことを言ってたりします。本当に全く自覚がないんですよね。
そうして周りから人が離れてしまい、孤独になっていくという。
リサとフィオナが逆だったらな
運命のイタズラですよね。
ジェリーはフィオナが脈なしでリサが脈ありっぽいっていう雰囲気を察知できないんですよね。
最初にリサとデートしていて、孤独が癒されていれば、あんなことにはならずに済んだかもしれない。
転けてぶち殺していた可能性もあるけど。
にしても1人で中華屋に行った後に1人で泣いてるのが可哀想すぎる。
本当にずっと寂しいと感じながら生きてきたんだろうな。
ずぶ濡れの女を車に乗せてあげるのも優しい。色々濡れて嫌だろうに。
着替えるときに見てしまってごめんって本当に申し訳なさそうに目を逸らすのも純粋な男って感じがする。
母親が自殺するとき
息子に殺してと言いながらグラスの破片を渡す時、
息子が怪我しないように、布で持ち手のところを巻いて渡していましたね。
ただただ辛い。
病気への理解がなく、きっとまともな治療もされなかったんだろうと思います。
ドイツからアメリカに来て、異国で生活するストレスもあっただろうに、モラハラっぽい夫にも理解されず、頼れる家族もおらず、1人ぼっち。
母親のシーンは一瞬のでしたが辛いシーンでした。
ジェリーの年齢
同僚が調べたネット記事によると、ジェリーとお母さんのインシデントは1997年7月9日に起きたんですね。
この映画の舞台がいつなのかわかりませんが、テレビは薄型でしたね。
順当に2014年が舞台なら、17年後ですね。
あの事件当時のジェリーはローティーンに見えたので13歳だと推察すると映画内のジェリーは恐らく30歳前後ですね。
だからなんだって感じですが、なんか気になっただけでした。笑
確立されてしまったセルフルール

https://www.gbhbl.com/horror-movie-review-the-voices-2014/
事故で牛を轢いてしまったとき、死にかけて苦しんでいる様が母親と重なってしまっていましたね。
殺してくれと。
転けて刺してしまったときも同じ感覚に陥ったんでしょう。
『刺しちゃってほんとにごめん』って咄嗟に謝るところはブラック・コメディ過ぎました。
苦しそうにしている生物は殺さないといけないルール。
そもそもサイコパスでもある
ディスカバリーチャンネル的なやつ見ていましたね。
動物が捕食されるシーンに魅力を感じてしまっていましたね。
ごめんと言って複数回刺し、そのあと笑ったのは楽しかったんでしょうね。
犬:今すぐ警察に連絡しろ!
猫:殺しをしている時だけ生きていると実感できる!
もっと第三者目線のシーンあってもよかったのかも
グロ映画を作ろうとしていないんだと思います。
遺体を切断するシーンも実際に刺し殺すシーンも映しません。
もうちょっとやばい映像見せてくれてもよかったのにな〜と思いました。
終盤で精神科医を自宅に拉致ったとき、
“なるほど。最後に取っておいていたのか”
と思ったら最後までほとんど弱グロでこの映画は終わりました。
彼女の死体は美しく見えたが、内臓が落ちていたところを見ると目も当てられないようなひどい有様だったことが推察されます。
それを最後にバーン!と映してくれていたらめちゃくちゃインパクトになったのに!
比較対象になるかはわかりませんが、アメリカンビューティーのラストのメナ・スバーリのおっぱいみたいな。
ずっと見えそうで見えないを繰り返してこちらのフラストレーションが溜まってきたところでおっぱいドーンですよね。
グロくなるか!?ならないのか!?来るか!?来ないのか!?って結局こなかった。
遺体の処理
綺麗に肉をたっぱーに入れたのはなんでだろう。
犬に食わせてたんかな。
それか自分が食ってたんかな。
リサも割と変なやつ
リサとの初デートで自分の育った家と言って廃墟に連れていくの意味わからない。
リサも受け入れんなし。
嫌な思い出がある家になぜ行ったんだ。
サラッとナイフを棚においていったの怖。
ここで殺す気だったんだ。
トラウマを通り越して快感になりつつあったのか。
防衛本能で痛みが気持ち良くなったりするみたいな話あるじゃないですか。
似たようなことが起きている?
サプライズでケーキ持って行きたいからって住所聞くのってちょっと蒸気を逸していると思うんだけど。
これ男女逆だったらホラーの導入ですよ。
しかも普通の家の鍵をヘアピンでピッキングできるの凄すぎる。
この女もちょっとおかしい。
逆に笑ってしまったホラーシーン
ベットルームに逃げたリサと話す時のジェリーのライトアップが怖すぎる。
ただ急にあからさまなホラー演出でむしろ笑ってしまった。笑
一応クリスチャンなんだ
信仰心はあるみたいね。
いいひとになりたいという気持ちはあるっぽい。
精神科の先生
セラピーで救われると思っているんだ。
先生なら自分を救ってくれると思っているみたい。
もうパニックに近い行動よね。
それでも責めないのが精神科の先生ですね。
『1人ボッチで生きること、それがあらゆる不幸の素。でもあなたは不幸じゃない』
今まさに患者が求めている言葉を言えるのが精神科の先生よね。
ペットに餌をやらないとって精神科の先生を自宅に持っていくって、ルーティンは絶対なんだね。
精神科医『電話をさせて欲しい』
ジェリー『警察に電話するんだろう』
精神科医『ひとりぼっちが怖いの』
患者が共感しやすい理由を咄嗟に言えるところがすごい。
1人じゃないよって言って生首を持ってくるのはやばい。
笑った。
精神科医『お願い傷つけないで、彼は病気なの』
警官『我々の安全が最優先ですよ』
現実問題そうなりますよね。
最後は自殺
良いひとでありたいのに、うまく生きていけない。
主人公が幼少期からまともな教育と治療を受けていれば、家族から愛情を受けて育っていれば、もっと楽しい人生だったんじゃないか、、、。
どこか主人公を嫌いになれない。
音楽が垢流ければ明るいほどジェリーの悲しさを思って切なくなる作品でした。
にしてもライアン・レイノルズの演技がうますぎる。
表情の幼さとか、共感できていなさそうな宇宙人っぽさがすごくよく表現できていたと思います。
一応、最後はハッピーエンドですね。
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