ネタバレ無し感想
モラハラ夫が、見下していた妻が案外優秀だったということと、子育てと育児についてを学ぶ話です。
男と女で全く意見分かれそうだし、モラハラされた経験があるかないかでまた全く意見分かれそうな映画です。
”モラハラ夫”がどんなものなのか想像がつかない人からすると父親と息子が絆を取り戻すハートフル作品に見えるかもしれません。
あるいは、無責任で自分勝手な母親に振り回された父親を描いた作品と捉える人もいそう。
タイトルは前々から知っていたんですが、まさかこんな話だとは思ってなかった。
なんかインクレディブル・ファミリーを思い出しました。
本作は1979年の作品でインクレディブル・ファミリーは2018年の作品。
39年経っても、世の中あんま進化してないんだなと思いました。
複雑になってしまいそうな話なのに、全く説明的でなく、すんなり観れるのがすごいです。
人物描写がしっかりされてて引き込まれました。
息子がめちゃくちゃ可愛い。
あとメリル・ストリープが超絶美しい。彫刻みたいでした。
基本情報
Kramer vs. Kramer
クレイマー、クレイマー
1979年 105分

https://scottdistillery.medium.com/great-scene-kramer-vs-kramer-177620f51bf4
制作国 : アメリカ
日本公開 : 1980年4月5日
アメリカ:1979年12月8日
興行収入 : アメリカ・カナダ:$106,260,000
日本:16億円
ジャンル:ドラマ
あらすじ
仕事第一の夫・テッドに愛想を尽かして家出した妻・ジョアンナ。その翌日からテッドは7歳の息子を抱え、仕事と家庭の両立に励んでいく。数々の失敗を乗り越えて父と子の間に深い絆が生まれた頃、息子の養育権を主張するジョアンナがテッドの下を訪れる。
※参照元:U-NEXT
日本版 予告編
英語版 予告編
スタッフ
監督 : ロバート・ベントン
脚本 : ロバート・ベントン
原作 : エイヴリー・コーマン
製作 : スタンリー・R・ジャッフェ
音楽 : ヘンリー・パーセル/アントニオ・ヴィヴァルディ
配給 : コロンビア ピクチャーズ
キャスト
テッド・クレイマー:ダスティン・ホフマン
ジョアンナ・クレイマー:メリル・ストリープ
ビリー・クレイマー:ジャスティン・ヘンリー
マーガレット・フェルプス:ジェーン・アレクサンダー
ジョン・ショーネシー:ハワード・ダフ
ジム・オコナー:ジョージ・コー
フィリス・バーナード:ジョベス・ウィリアムズ
グレッソン:ビル・ムーア
スペンサー:ジャック・ラメージ
パーティー出席者:ジョー・セネカ
アワード
- 第52回アカデミー賞受賞 – 作品賞/監督賞/脚色賞/主演男優賞/助演女優賞
- 第37回ゴールデングローブ賞 ドラマ部門作品賞/脚本賞/ドラマ部門男優賞/助演女優賞
- 第14回全米映画批評家協会賞 監督賞/主演男優賞/助演女優賞
- 第45回ニューヨーク映画批評家協会賞 作品賞/男優賞/助演女優賞
- 第5回ロサンゼルス映画批評家協会賞 作品賞/監督賞/脚本賞/男優賞/助演女優賞
- 第23回 ブルーリボン賞 外国作品賞
- 第53回 キネマ旬報賞 委員選出外国語映画部門第1位/読者選出外国語映画部門第1位
おせっかい情報
見る際の注意
特になし
こんな人におすすめ
リアリティのある物語が好き 結婚についてリアルに描いた作品が好き
この作品が好きな人が好きそうな映画
- ブルーバレンタイン レボリューショナリー・ロード
※完全な偏見です。
⚠️ネタバレ有レビュー⚠️

https://www.academymuseum.org/en/programs/detail/kramer-vs-kramer-01872abb-2805-a851-9b51-41e71e1012ec
仕事最優先のモラハラ男
結婚生活については描かれませんが、モラハラ夫だったということがハッキリわかんだね。
子供の学年すら把握していないって、飛び級システムがあるアメリカとはいえ流石に酷すぎる。
嫁に子育ても家事も全て丸投げにしていたことがこのエピソードだけでわかるのがすごいです。
嫁が何か話そうとすればカッとなってまともに話し合いできないところ、モラハラの典型的なパターンな感じがしました。
暴力を振るわないだけよほどマシですが。
やっぱり優秀な人は優秀

https://fourstarfilmfan.com/2014/12/30/kramer-vs-kramer-1979/
ただこのお父さん、最初こそかなりドタバタしていましたが、仕事も子育ても家事もこなせるようになったのは素晴らしかったです。
根が優秀だからですね。
ここで腐って育児放棄する父親が知恵もおかしくないのに、このお父さんはちゃんと息子と向き合って、息子のためならなりふり構わない。
部屋も綺麗だったし、信頼関係も築けていたし、最優先に息子のことを考えるいい父親になってました。
これだけ真っ当な主人公だと、嫁が出て行く前は、なによりも息子のためにと仕事で無理をしていたのかもしれませんね。
モラハラ男の成長
嫁を家庭に閉じ込めて、無能だと思っていただろうに、嫁は外に出たらちゃんと稼げてたんですね。
育児の辛さを実感して、嫁の実力を買い被ってたことを自覚して、反省した結果出たセリフが『パパのせいで出て行ったんだ』っていうところに繋がるんですね。
容量を掴めば余裕でシングルファーザーとしてやっていけそうな感じ。
部屋も清潔に保てていて偉い。息子への愛情も感じます。
『ママが出て行ったのはパパがママを型にはめようとしたからだ。』
少しずつ家事育児の現実を経験しながら、自分の不甲斐なさを理解しているのも優秀ですね。
いい父親になろうとするところも素晴らしい。
無駄なプライドがない。見ていて応援したくなります。
自殺寸前の嫁

https://www.mattheweng.net/kramer-vs-kramer
この映画はワンオペ育児で心が折れた妻が、別れを言い出すシーンから始まります。
1番大変だったであろう時期に独りぼっちで子供と向き合っていたんだろうと思うと、抱きしめてあげたくなります。
育児鬱で自殺寸前まで追い詰められて、死ぬよりあの場から逃げ出したのは英断。
聡明な女性であることが伝わります。
シャッターアイランドの嫁のようにならなくて良かった。
出て行った後に、精神状態を整えて仕事も見つけてから迎えに行ったのも懸命な判断だったと思います。
勧善懲悪とはいかない現実
離婚裁判ってあんなにしんどいんですね。
胸を引き裂かれるような気持ちで見てました。
お互いが真摯に息子を大事に思っていることを再確認して鬼になりきれないところが現実味があっていいですね。
ビリーに証言台に立ってもらうことになるなら諦めるって徹底的に息子のことを思っているいい父親。
ママかパパか選ばせるようなことできないですよね。
2人とも徹底的に子供最優先で考えているのが素晴らしいです。
結末

https://quillette.com/2023/10/06/a-man-out-of-time/
裁判では当たり前のように収入も良くて今まで面倒見ていた母親が親権を獲得しますが、母親の申し出で父親に親権を渡します。
母親は自分の息子への愛情はあるものの、子育ては向いてなかったと思ったのでしょうか。
”めぐりあう時間たち”のローラや”子宮に沈める”を思い出しました。
産んだ後じゃないと子育てへの適性がわからないのに、産んだ後は子供から逃げられないという最大のギャンブルに負けたんですね。
”子宮に沈める”でほとんど男が出てこないように、男は適性がなかったとしてもワンチャン女に押し付けて逃げれる。
でも本作は安心しました。
父親は父性に溢れていてシンパパとしてもやっていけそうなくらいの能力と精神力がありそうです。
ビリーを安心して委ねられる逞しいお父さんで良かった。
案外、後味は悪くない作品でした。
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