こちらあみ子 (2022年) 104分【ネタバレ・考察】残酷なほどリアルに発達障害の女の子を描いた作品。

こちらあみ子

ネタバレ無し感想

ADHD+ASD+LDの女の子を定点観測したかのような映画でした。

風変わりではないです。完全に発達障害です。
映画を売り出す時に発達障害という文言を使うと、どこかあみ子に対して批判的な気がするので風変わりと柔らかい言葉にして良かったと思います。

ただ、事前情報ゼロで観始めたので、てっきりサクッと観れる田舎のおてんば娘の話かと思って再生してしまいました。
かなり重い話だったのでご注意ください。

基本情報

AMIKO
こちらあみ子
2022年 104分

こちらあみ子

https://kochira-amiko.com/

キャッチコピー『応答せよ、応答せよ こちらあみ子、こちらあみ子』
制作国 : 日本
日本公開 : 2022年7月8日
ジャンル:ドラマ / ファミリー

あらすじ

あみ子はちょっと風変わりな女の子。優しいお父さんとお兄ちゃん、書道教室の先生でお腹に赤ちゃんがいるお母さん、憧れの同級生・のり君たちと元気に過ごしていた。だが、彼女のあまりに純粋無垢な行動は、周囲の人たちを否応なく変えていく…。

※参照元:U-NEXT

日本版 予告編

英語版 予告編

スタッフ

監督 : 森井勇佑
脚本 : 森井勇佑
原作 : 今村夏子
製作 : 南部充俊/飯塚香織
製作総指揮 : 近藤貴彦
音楽 : 青葉市子
配給 : アークエンタテイメント

キャスト

あみ子:大沢一菜
お父さん・哲郎:井浦新
お母さん・さゆり:尾野真千子
考太:奥村天晴
のり君:大関悠士
坊主頭:橘高亨牧
保健室の先生:播田美保
おばあちゃん:黒木詔子
幼い日のあみ子:桐谷紗奈
幼き日の考太:兼利惇哉
学校の先生:一木良彦
校長先生:柿辰丸

アワード

  • 第27回新藤兼人賞:金賞(森井勇佑監督)
  • 第14回TAMA映画賞:最優秀新進監督賞(森井勇佑)
  • 第77回毎日映画コンクール:音楽賞(青葉市子)
  • 第36回高崎映画祭:新進監督グランプリ(森井勇佑)/最優秀新人俳優賞(大沢一菜)
  • 第96回キネマ旬報ベスト・テン 日本映画ベスト・テン 第4位
  • 第52回ロッテルダム国際映画祭Bright Future部門出品
  • 第32回 日本映画プロフェッショナル大賞:作品賞/新人監督賞(森井勇佑)

おせっかい情報

見る際の注意

子供が可哀想な目に遭います。

こんな人におすすめ

発達障害について関心・興味がある。

この作品が好きな人が好きそうな映画

※完全な偏見です。


 

⚠️ネタバレ有レビュー⚠️

ASDがいかにして(全く悪意なく)周りを不幸にするか、いかにして嫌われていくのかがこれでもかってくらいリアルに描かれていました。
もうこれ家族全員カサンドラじゃん。
カサンドラ経験者はPTSD発症するレベルで発達障害の解像度が高いです。
”あの頃の感情”を死ぬほど思い出すと思います。

天才子役じゃん

あみ子役の子役もすごく良かったです。
表情に感情が乗ってないところがとてもリアルでした。
あの何考えてるのかわからない感じ。
演技がうますぎる。

綿密な人物描写

とにかく登場人物たちの解像度が高過ぎる。この監督すご過ぎる。
あまりにもリアルな展開で、ドキュメンタリー見てるのかと思うほどでした。

日本に蔓延する内容が何もない邦画とは違い、かなり綺麗事を排除して作品を作ったんだなと思いました。
ただリアリティがありすぎて、ASDの人マジ無理ってなる人はなってしまうような作品だと思いました。
もはやちょっとホラーでした。

あみ子を含め全員に同情

時代背景がいつなのかわかりませんが、2010年代くらいですかね?
当時は自閉症こそ認知度は高かったですが、今、発達障害やASDと診断を受けた人たちは”天然”とか”KY”と呼ばれて笑い話になってましたね。
むしろその突拍子もない発想や行動が可愛いと笑っていました。
本当に苦しんでいた当事者たちが、自分と他人がなんか違うと認識して1人で抱え込んでどうしたらいいのかわからなかった時代。

発達障害の認知がもっと広まれば、診断を受けていれば、猫や犬を飼っていれば、療育に通わせてあげていれば、とにかくできることがたくさんあることを実父が知っていれば、、、。
家族の接し方も変わっただろうし、あみ子ももう少しハッピーな生活を送れたはずなのにと。
本作は主人公が子供だったから特に胸が痛かった。

特に、父親があみ子を押して徐々に廊下に出すシーン、、、酷いなって思ったけど、父親も限界なんですよね。

序盤から爆裂しているあみ子

映画始まってすぐ、あみ子が発達障害なのがわかるようになってました。

注意散漫でコーンの汁をこぼす。
妊婦の女性が『あみ子さん』って呼んでいたので継母であることもすぐにわかりました。
そして”インド人はやるな”とか、意味はわからないけど、多分遊びでなんかやってうるさくしていたんだろう。
あみ子はみんなの輪の中に入りたいのに入れてもらえない。
側から見たら他の子供達の邪魔になることをしたから、あみ子の自業自得だけど、あみ子には何故なのか理解できないっていう構図か。

ケーキより真っ先にプレゼントをもぎ取るところとかコミュニケーションに難あり過ぎる。
ありがとうもない。
そんで継母が頑張って作ってくれたあみ子の好物も無視してクッキーを舐める、、、。
いくら小学生とはいえ自己中過ぎて無理。

発達障害の子育ては実子でもしんどいだろうに、継母でさらに妊娠中となったらほんとうに無理だと思う。

コミュニケーション介護を一手に担っていた兄貴

なんて心の優しい兄貴だったんだ、、、。
あの家族の中で唯一、あみ子とちゃんと向き合ってコミュニケーション取ろうとしてあげていた人だったね。
でもあみ子は注意散漫すぎてなんも人の話聞いていないし、自分のペースでしか生きていない。
そりゃコミュニケーションがずっと一方通行なら兄貴も心が折れるわ。
こちらの問いかけには応答できないのに、永遠とあちらの問いには応答し続けないといけないんだから。
もはや介護ですよ。

兄貴も小学校高学年くらいでしょ?まだ子供なのに10円ハゲができるって、、、。
いじめられていた様子も描写もなかったので本作としてはあみ子によるストレスが原因ですよね。

兄貴が嫌がっているのに無理やり10円ハゲを見るシーンとかほんとイライラした。

あみ子がああやって自己中な言動を繰り返していたら、自分の生活が侵食されていくよね。
しかも親もなんもしないどころか、親も自分と同じ状態で更に継母は鬱だし、父親は仕事で家にいなかったりするし。

そりゃ兄貴も家庭に居場所を失って不良になりますよ。
家はあみ子が中心で回ってんだから。

善意で継母に止めを刺したあみ子

こちらあみ子

https://kochira-amiko.com/

弟の墓のくだりはアスペムーブ過ぎて死ぬほどイラついた。
ただ、冷静になって考えるとあみ子に悪意は全くないんだよな、、、。
それどころか死を理解していないだけで、優しさ100%だったんだろうから本当に心が痛かった。
あみ子の善意100%の行動によって、継母の心が完全に壊れたってもうなんか唖然としました。

あみ子がASDっていうのを知らなかったら
“あの子は妹が死んだことをなんとも思っていないし、母親があれだけ辛い思いをしたのに無神経にも話題に出す。自己中心的で思いやりがない子供”ってなっちゃうのかな。

父親は頑張ったよ

あんな娘なら限界くるよ。
しかも発達障害と知っていればまだ対処しようがあったかもしれないけど、”たまたまうちの子だけ様子がおかしい”って認識なんでしょ?
会話も通じないんだから地獄でしかないよ。

お惣菜ではあったけど、あみ子と一緒に食卓囲ってちゃんと世話してあげていたと思うよ。
だって奥さんはお墓事件でもう鬱状態でしょ。
お父さんが仕事も家事もやっていたんだろうなと思うと、兄貴のタバコを怒る気力もないよ。

“あみ子にはわからんよ”
って言ったシーンで、感情をなんとか抑えて耐えているような呼吸に泣きそうになりました。
よく殴らなかったよお父さん。
これで殴ってたらほんとに終わってたよ。
だって、いうてお父さんなんもしていないんだから。

家族は壊れたが、自分が壊れる前にあみ子と距離を置いたのはあの状況ではいい判断だったと思います。
父親は息子と絆を作った後に、発達障害について勉強してあみ子を迎えに行ってくれ。

因果応報

クッキー舐めんの本当に気持ち悪い。
あのシーンはめちゃくちゃストレスでした。

“あの時食わされたしけったクッキーはあみ子が舐めたやつか”
と思春期の男の子が知ったら殴るか。
殴られて当然とも思ってしまう。

なんで自分が唾付けまくったやつを人にあげることの気持ち悪さを全く理解できないんだろう。

多分、あみ子は他の人が目の前で舐めたクッキーを渡されたら””汚いから嫌じゃ””っていうと思うのよ。
あみ子は
自分の唾液=他人にとっては他人の唾液
っていうことの理解ができているか怪しい。
自閉症傾向強そうだから他人と自分の境界線が曖昧だと思う。
あみ子に関しては結構キツめだから、これ以上にないくらい言語化して説明しても理解できなさそう。

さすが兄貴

自分の感情を言葉で表現できないから歌ってんだよね。
迷惑な発散方法すぎる。ほんとあみ子とは一緒に生活できない。

と思ったら突然、帰宅した兄貴がいとも簡単にオバケの正体を突き止めて対処していましたね。
今までずっと応答してきた兄貴だから、感覚でわかったんだろうな。

本来、関係が長くなると、この”阿吽の呼吸”みたいなものが発生して、血の繋がりがなくても、
単なる友達でも、言おうとしたことがわかったり、同じタイミングで全く同じことを言ったりすることがありますよね。

兄貴が察知できたのはその感覚があるからなんだろうなと思った。
あみ子にその能力はないけど。

てか父親はなんで対応しなかったんだろう?ベランダから変な音がするって言ってたのに、ベランダを覗きもしなかったよね?
もうあみ子と会話しようよしてくれる人いないじゃん。

フラットな坊主

“お前の気持ち悪いところ100億個あるで”
って言ってた男の子、あみ子と相性いいよね。

唯一あみ子に直接的な表現で客観的にあみ子がどう見えてるか伝えてあげてたな。

俺の秘密じゃって、具体的にキモいところを言わなかったのは優しさにも見えてかっこよかったけど、
行動の変なところっていちいち言語化できないor指摘し始めたらキリがないってところもわかってしまう。

ひとりぼっちになりました

こちらあみ子

https://kochira-amiko.com/

誰もあみ子に応答してあげなかった結果、あみ子が独りぼっちになりました。

ラストのイマジナリーフレンドにサヨナラしたのは
独りぼっちになった現実を受け入れたということなのかしら。

父親にASDの知識があったらなぁ、、、。
“母親の前で赤ちゃんの話をしない”とか、”兄貴のハゲには一切触れない”とか、いちいち言語化して対応してあげてたらなぁ、、、。
たぶんだけど、あみ子が自分の問題を認識できないから、周りがアプローチするしかないのよ。
その両親が諦めてしまったらもう誰がそれやってくれるのよ。
他人からしたら関わりたくない一択なのよ。
家族でも絶縁するレベルなんだから、、、。

最後、世話を担うのが老人なのか、、、。
イニシェリン島の精霊を思い出したなぁ、、、。

参考情報

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