ネタバレ無し感想
ある種のタイトル詐欺。笑
原題の”Daddy’s Little Girl”のままの方が良かったと思います。
拷問男というタイトルを見て、『ムカデ人間』や『ホステル』のようなボディーホラー映画を想像した人は多いんじゃないでしょうか。
人権ガン無視でひたすら拷問するヤバい男が出てくる映画かと思った。
まさかこんな良作だったとは。
かなり真面目に製作された印象のある、地に足の着いた低予算スリラー映画でした。
テンポ良き、登場人物たちの解像度が高き。
B級低予算映画に間違いありませんが、質の良さを感じました。
ゴア表現も期待値以上にリアルでした。
そして何より、普遍的な怒りをテーマに持ち、
その怒りの終着点が非常にリアルで、深い余韻を残す作品でした。
基本情報
Daddy’s Little Girl
拷問男
2012年 107分

https://mubi.com/en/jp/films/daddy-s-little-girl
キャッチコピー『イダイヨォー…イダイヨォー…』
制作国 : オーストラリア
日本公開 : 日本未公開
オーストラリア:2012年8月
レイティング : PG-13(アメリカ)
ジャンル:ドラマ / ホラー / スリラー / サスペンス / バイオレンス
あらすじ
シングルファーザーのデレクは、失踪した幼い娘が変わり果てた姿で発見され、絶望の淵に突き落とされた。警察が捜索を続けるなか、デレクは独自に犯人を探し出し、自宅の地下室に監禁。復讐の鬼と化したデレクは、娘と同じ痛みを与え始める。
※参照元:U-NEXT
英語版 予告編
スタッフ
監督 : クリス・サン
脚本 : クリス・サン
製作総指揮 : リア・ブレイ
ショーン・ガノン
ドミニク・クリスキ
音楽 : マーク・シミス
キャスト
ジョージア・リレイ:ビリー・ベーカー
デレク・リレイ:マイケル・トムソン
ステーシー:アリラ・ジャクース
シアン:ホリー・フィリップス
タニヤ:レベッカ・プリント
コリン:ショーン・ガノン
トーマス(トミー)・リレイ:クリスチャン・レッドフォード
トニー:ミルコ・グリリーニ
メリッサ:ブルック・チャンバーレイン
デレクの父:アンソニー・トーマス
アワード
- ASIN アワーズ:長編映画賞/監督賞/脚本賞/最優秀プロデューサー/撮影監督賞/作曲賞/最優秀女優賞/最優秀男優賞
- ポーリー・グリント・フィルム・フェスティバル:主演男優賞、監督賞
ポスター/パッケージ
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おせっかい情報
見る際の注意
リアルなゴア表現あり。 子供がひどい目に遭う映画です。 苦手な方はご注意ください。
こんな人におすすめ
テーマがしっかりしている映画を観たい。
この作品が好きな人が好きそうな映画
※完全な偏見です。
⚠️ネタバレざっくりあらすじ⚠️
https://play.google.com/store/movies/details/Daddy_s_Little_Girl?id=-1g7RJoDTAo&hl=en_US
善良な男、デレク
主人公のデレクは弟のトミーと親友のコリンの3人で起業し、海辺でサーフボードの事業を営んでいる。
バツイチのシングルファーザー。
ある日、仕事をせずに遊んでばかりいた弟のトミーをクビにした。
すると、トミーは逆恨みでデレクの娘のジョージアを誘拐し、浜辺で殺害してしまう。
デレクは突如として娘を失い引きこもるようになる。
事件から半年が経ち、依然として犯人は見つからない。
ずっと引きこもっているデレクを心配し、トミーはパーティーに招待をした。
なんとか思い腰を上げてパーティーに参加するため、トミー宅へ出向くデレク。
そこでトミーの犯罪について記された日記を見つけてしまう。
拷問男へ
中には娘のジョージアのみならず、数々の犯罪の告白が書いてあった。
デレクはその日記を持って警察署までいくが、思いとどまり自分で制裁を加えることを決意。
拷問方法についてリサーチし、器具を作り準備をした上で弟に睡眠薬を飲ませて拘束。
ジョージアが6歳であったことにちなんで、6日間に渡って拷問を決行。
日記の内容を読み上げながら、トニーが子供たちにしてきた残虐行為に近しい苦痛を弟に与えていく。
”逃げられないように膝の皿を割った”という弟の膝を割る。
”恋人がいた女の子をレイプした”というトニーの肛門に有刺鉄線を入れ、引き抜く。
こうしてトニーを死なない程度に痛めつけていった。
そして6日目。自宅を訪ねてきたコリンをトニーの元へ案内する。
するとコリンは通報。
警察がデレクの家に向かう最中、デレクは弟を殺そうとするが、娘の顔が浮かび、殺人は思いとどまる。
最後にデレクは逮捕される。
エンドロールの際に過去の児童を対象にした性犯罪や殺害事件の犯人へ課せられた甘すぎる懲役刑が読み上げられる。
⚠️ネタバレ有レビュー⚠️

https://www.csfd.cz/film/325045-daddy-s-little-girl/videa/
序盤の幸せな映像が素敵でした。
ただこういうタイトルの映画だと、きっと娘に何かが起こるんだろうと予見してしまうので早々に胸糞を覚悟しました。
この子に何かがあって、お父さんが拷問男になるのか、、、と。
『how this happen』じゃねーよ
悪いけど母親のせいよ。あの発言には私もムカついたわ。
母親が娘の安全より自分の意地を優先したからよ。無駄なプライド。
直前に窓の話もしているんだから元夫の善意を受け取らなかったのが招いた結果だよなぁ、、、。
平屋の子供部屋の窓なんて日本でもすぐ修理しますよ。
しかも無料で直してくれるって言ってんだからお言葉に甘えるでしょ。
他のところもついでに直してもらうわ。
離婚理由が不明なので、旦那事由ならああなってしまうか。
ただね、出産時に寄り添ってくれる夫に対して暴言を吐いたり(これは大目に見てあげたいけど)、
娘のおもちゃをちゃんと片付けていなかったり、
お誕生日パーティーの邪魔になるタイミングで電話したり、
“私の娘で楽しんでていいわね”って嫌味を言ったり、
最後まで”私のせいじゃないのに”と言っていたり、
この母親の性格にだいぶ難がある感じがするんですよね。
自己中でヒステリック。
Karen(ヒステリックな女性を揶揄するスラング)って感じがする。
弟が怪しい
最初、犯人は弟だろうと思いました。
立ち上げメンバーなのにクビになったことに対して恨みを持っているから動機もバッチリ。
現場にいち早く駆けつけている。棺を先頭で運んでいる。
やたら目に入ってくる弟が怪しいなと思いました。
にしても弟役の俳優が適任すぎる。
どこか人をイライラさせるような話し方と表情。
滑舌悪いし、ずっと口空いてるし、口元の緩い感じがイライラする。
ナイスなキャスティングです。
勝手にミスリード
ただあまりにも弟が犯人でしかない描き方がされているので、
私は勝手に親友も疑ってしまっていました。
親友は常に心の状態を気にかけていてくれて、
娘を失った親友のために店を守ってやってたわけですよね。
茫然自失な主人公に対して『気が済むまで休んでくれ』って素敵でした。
警察署前で自ら裁きを下すと覚悟したのはわかったんだけど、
この時、似顔絵を見なかったんだよな。
弟が異常者であることは確定しているけど、最初に日記を読んだ時点ではジョージア殺人の犯人だとは確定していないんですよね。
なので、兄はジョージア殺人の犯人だと思い込んで弟を拷問し、殺害した。
けど実は親友が犯人という胸糞に胸糞を塗り重ねたような展開を想像してしまいました。
そういう映画ではなかった
ストレートに弟が犯人でしたね。
映画全体のテンション的に自分が想定したような展開はないよなと見終わった後思いました。
ホラー映画を見過ぎた病ですね。
ちゃんと似顔絵も弟だったね。
日記の内容
- 10歳のBenを”教育”した。(恐らくレイプし、暴行し、殺害)
- 何人もの子供を”可愛がってきた”。(恐らく上記と同じことをした)
- 自分も立ち上げメンバーにも関わらず、兄とコリンに首にされた腹いせで娘のジョージアを暴行し、殺害した。
- 道で拾った15歳の恋人がいるブロンドの女をレイプし、殺害した。
字が汚すぎて私には読めませんでした、、、他にも情報欲しかったのになんか悔しい、、、。
父親は狂ってない、普通の人
拷問をするにあたって、入念に準備するところとか、自分が捕まることも想定しているところとか、優秀な人なんだよな。
いわゆるサイコパスや精神崩壊した狂人というわけではなく、他の人より少しIQが高い程度の普通の人感じがする。
心が壊れてしまったが、正気だし、普通の人に見えるから、拷問男に感情移入してしまう。
だからこそ観ていて辛い。
もしも自分の娘が誰かにレイプされて殺されたらと思うと、拷問男がしたようなことを、仮にしなかったとしても想像はしてしまうと思う。
弟の拷問と日常が交互に映されていくのが余計にグロいです。
親や警察が家に訪ねてくるシーン、あっさりし過ぎてて笑いました。
普通のホラーならもう少しハラハラさせるのに。笑
みなさん見飽きたと思うのでそのくだりやりませーん!って感じ。笑
現実に起きていること
インドのこのニュースを思い出しました。
娘を強姦された父が怒り狂い犯人の両手を切り落とす 父は復讐を果たすが殺人未遂容疑に
生後7ヶ月の女の子を性暴行した疑いで起訴された10代の少年は、現在は青少年矯正施設に拘束されている。
一方、少年の両手を切った被害者の父親、パルミン・シンは現在逃亡中で殺人未遂容疑がかけられている。
参照元:https://news.nicovideo.jp/watch/nw2463435
現実で起きていること。自分のことでなくても怒りが湧くこと。
失ったものに対して、あまりにも軽すぎる刑に自分だったら復讐に走ってしまうかもしれないと、つい自分ごととして想像してしまいます。
ものすごくリアルに感じてしまう。
娘レイプした隣人を拷問・殺害し自首、「メッセージ」だと父親
インドで、14歳の娘をレイプしたとされる隣人の男を拷問の末に殺害した父親が警察に自首した。娘の母親によるとこの父親は、レイプ犯はその報いから逃れることはできないというメッセージを伝えたいと願っていたという。
6人の子を持つこの父親(36)は先週、警察に出頭し、娘(14)をレイプしたことを認めた隣人の男(45)を絞殺したと自白したという。娘が妊娠したと知り行動を起こしたと話しているという。
参照元:https://www.afpbb.com/articles/-/3031072
現実にあまりにも多くの事件が起きていて、その一人一人に家族がいることを想うと呆然としてしまう。
どうせ司法は捌かないんでしょ。
一度は警察に言おうと思ったんだけど、行ったところで彼らの刑なんて高が知れている。
お勤めを終えたら普通に生活をするなんて。普通に考えて許せなかったんだよな。
娘だけじゃない、ベンは10歳で膝を砕かれた、
恋人がいる15歳のケルシーはレイプされて殺された。
アイツは終身刑になったところで、ぬくぬくムショ暮らしだ。
人権を蔑ろにした奴に人権なんてないだろ。
なのに司法は犯人の人権を守る。
なら俺がやってやる。
っていう。
娘の幻覚

https://gamesuperreview.com/thelast-ofuspart2-63
娘の幻覚を見ていたシーンは泣きました。
“おじちゃんをいじめて楽しい?”
“悪いことをすると刑務所に入れるんじゃないの?”
あの子がどれだけ苦しい思いをしたんだろうと想像すると、あの程度の拷問で許せない。
でも娘が復讐を望んでいるのか、自分の父親が復讐のモンスターになってしまうことを望むのか。
娘と海辺で遊ぶシーンがフラッシュバックするのも切ない。
娘を思い出して、殺人は留まるんだ。
自分はまだ人であり続けるために。
the Last of us 2のエンディングみたいだった。
虚無感だけが残る。
次は刑務所が待っている
生き続けさせる方が苦しいだろうということで見逃したのは正解だなと思いました。
もう弟は歩けないだろうし、腕も指も失っているし、有刺鉄線による肛門破壊でワンチャン、人工肛門で、今後も生きていかないといけない。
生きているだけで地獄ですが、それでも罰が足りないと感じてしまう。
『目には目をと言って世界は堕落した』
デトロイト:ビカムヒューマンのマーカスが言っていたセリフです。
復讐の先には、何も残らない。娘も帰ってこない。
許すことがいかに重要なことなのか、頭では理解はしているんです。
でも心が追いつきません。
拷問男を責める気には決してなれない。
こんな悲しいエンディングを迎えるとは思ってなかったです。
ちょっとわかっていない点
テーマ性も感じたし、先が読めない展開も良かったし、人物描写も丁寧だったし、ゴア表現もしっかりしてていい作品でした。
ただ、拷問を行う際に、話していたイギリスのニュースが疑問に残っています。
”ある男の子は母親と買い物に行って5歳で拐われた。犯人は10歳の2人。
同情したからお前の指を切る。”
これは弟は関係ないですよね?
何も落ち度がなかったにも関わらず、悪戯に命を奪われることがどれほど残忍なことなのか思い知らせるために、無関係の事例を出したのでしょうか。
“西オーストラリアに継父から虐待された少年がいた。
継父は少年の上に電話帳を置いて、ハンマーで殴った。”
これ誰の話?あの弟が養子だったということではないよね?
娘の死因や遺体の状況
映像では見せられないくらい残虐だったのでしょうか?
あの日記の朗読だけでは全容が把握しきれませんでした。
視聴者の想像に任せることで、より残虐なことを想像してしまいます。
子供への残虐行為を批判する作品を作るのに、子供への残虐行為を撮影してしまっては本末転倒だから想像に任せるという展開は最善だったと思います。
日記の内容で
“砂場で殴り飛ばした。ジョージアは何度も父親を求めた、パパに会いたいと言った。”
という娘の最後のセリフを父親が読むなんて辛すぎる。
ラストのクレジット
This film is dedicated the memory of the all innocent children around the world that have been taken too soon.
訳:あまりにも早く命を奪われた世界中の罪のない子供たちの記憶に捧げる。
引用元:拷問男のエンドロール
この映画は至極真面目な、真っ当な思いの元に制作された作品でした。
拷問男というタイトルからはまるで想像のつかない、悲しく虚無感に溢れるラストでした。
関連情報
本作の監督、クリス・サンのインタビュー動画
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