泣き続ける男 (2024年) 22分【ネタバレ・考察】男らしさの呪縛。家族のために頑張る平凡な中年男性に観て欲しい映画。ハイクオリティな映像と音楽で謎の病に冒される中年男性の言葉にならない苦悩を描いた作品。

泣き続ける男

ネタバレ無し感想

ビジュアルボイス様よりご招待いただき先行視聴させていただきました。

2025年7月2日よりBSSTOにて配信開始。
https://sst-online.jp/

濃密な22分

映像も音も高クオリティでした。
大画面に耐え得る映像美と音。
プロジェクターで見ればよかった。

しかも内容もしっかりしていて、かなり好みなタイプの映画でした。
サクッと観れますが全く退屈しません。

中年男性に観てほしい

空白が多い印象の作品なので見る人は選ぶと思いますが、 中年男性はこの主人公に共感できるところが多いのではないでしょうか。

毎日、粛々と家族のために働いているのに、誰からも褒められず、どこか心に虚無感のある中年男性に観て欲しいと思った短編映画でした。

基本情報

The Cascade
泣き続ける男
2024年 22分

泣き続ける男

製作国 : メキシコ
ジャンル:ドラマ / 短編映画・ショートフィルム

あらすじ

男は、気づかないうちに数か月もの間、泣き続けていた。しかし奇妙なことに、彼の涙腺は逆の働きをしており、体の内側はまるで滝のよう涙で溢れかえっていた。何も感じていないのに、止まらない涙――男は、この見えない「涙」を止める方法を見つけることができるのか?

※参照元:Filmarks


日本版 予告編

スタッフ

監督 : パブロ・デルガド
脚本 : パブロ・デルガド

キャスト

ダニエル・ハダド
フェルナンド・アルバレス・レべール

アワード

  • 2024年クレルモン=フェラン国際短編映画祭:Canal+ アワード

ポスター/パッケージ

おせっかい情報

見る際の注意

特になし

こんな人におすすめ

誰にも褒めてもらえないのに家族のために頑張る中年男性におすすめ

この作品が好きな人が好きそうな映画

※完全な偏見です。


 

 

⚠️ネタバレ有レビュー⚠️

冒頭で知らない単語

知らない単語がいきなり出てきたので一時停止して調べました。笑
一応、載せておきますね。

失調性歩行

失調性歩行とは、運動失調によって引き起こされる歩行障害の一種で、体のバランスを保つのが難しく、ふらついたり、酔っ払いのように歩いたりする状態を指します。運動失調は、手足の動きをスムーズに行えなくなる状態を指し、脳卒中, 脊髄小脳変性症、多発性硬化症などの疾患によって引き起こされる可能性があります。

※AIによる概要

流涙症

流涙症(りゅうるいしょう)とは、涙が過剰に分泌されたり、涙の排出がうまくいかずに涙が目に溜まったり、こぼれ落ちたりする状態を指します。一般的に「なみだ目」と呼ばれる症状です。

※AIによる概要

タイトルの意味

「The Cascade」は、英語で「カスケード」と読み、小さな滝が連続して流れ落ちる様子や、階段状に水が流れ落ちる様子を表します。また、転じて、多くのものが次々に起こる様子や、連続的な現象、多くのものが連鎖的に発生する様子を表すこともあります。

病名と日本語タイトルがややこしい

泣き続ける男は、泣けないのが原因で、水が足に溜まるという病に冒されているという展開です。

”泣けるのか?泣けないのか?いつ泣くのか!?”
というだけの話なのですが、なぜか退屈しません。

いちいち映像と音がほんのりホラーです。

冒頭から映像へのこだわりを感じる

医師からの診断シーンから始まります。

診断結果を告げられる主人公にカメラが映ったとき、PCの画面に先生の顔が映っていました。
あ、細部に神が宿っているタイプの映像ね?と思いました。

おしっこ!笑

トイレで痛みに苦しむ主人公。
そしておじさんが入ってきたので泣くのをやめていました。
そして入ってきたおじさんのオシッコの描写しっかりしてた!笑

見たくない!笑

原因は深い悲しみの蓄積

あの序盤に出ていた胡散臭い医師による診断はとっても胡散臭かったです。

深い悲しみを抱えているそうですが、この男が抱えている悲しみは具体的には描かれません。
コマーシャルのような、豪華な生活ではなさそうですが、世間一般でいうところのそれなりに豊かで幸せな生活を送っているように見えます。

たぶん、中年の危機

この映画は中年の危機についての映画に見えました。

この主人公の具体的な不幸が描かれないので、何か日常的に蓄積された不幸ということなんでしょう?

家族のために働いて頑張ってきたんだけど、誰かに評価されるわけでもないし目標や夢もない、という状況でしょうか?

趣味とかがあれば違ったのかな?と思いました。

老いた体

嫁が車の整備士のことを
『行くたびに別のところを整備しろと言うから信頼ができない』
と言っていましたね。

なんだかこの主人公の老いた体のメタファーのように見えてしまいます。

それでも弱音を吐く暇はない

嫁に脚の調子を聞かれますが、少し痛いと痩せ我慢。
自分が支えていかないといけないということですね。

息子は成績不振で教育費がかかると。
車は整備から整備が必要で、金がかかると。

自分が弱音を吐いている暇はないのですね。

トキシック・マスキュリニティ

有害な男性性に蝕まれた世代のようにも見えました。

”男は泣くんじゃない!”と言われている世代の呪縛というか。

泣けるタイミングはいくらでもあったのに、泣けないわけですよね。
精神的な事情で泣けない男なわけです。
一家の大黒柱は泣けずにアラームが鳴ったら起きて仕事に行くわけです。

思い出した映画

Mr.ノーバディを思い出しました。
この人も毎日同じことを繰り返し、人生にぼんやりと絶望感を抱きつつも、側から見たら幸せな家庭持ちです。

与え続ける主人公

Mr.ノーバディの主人公と違う点は、この主人公は無能じゃないということですかね。

嫁に
『ちょっと整備士が信頼できない。私が車を取ってこようか?』と言われれば
『俺が行くからいいよ』と、普段から頼りになる感じするし、
『今日、学校まで送ってくれない?』と子供に言われれば即『もちろんだ』と答えるし、頼りになる優しいお父さんという感じがします。

涙は足から出てくる

歩くとピチャピチャと音がしていましたが、大号泣して水が抜けてからは音がしなくなりました。

悲しいということを認めてアウトプットすることが大切ということですね。

泣いているのに泣いていない

この俳優さん優秀ですね。
顔は完全に泣いているのに一切、涙が出ていません。
声も口の動きも号泣しているようにしか見えないのに、涙が一粒も出ていません。

関係ないんだけど

まつ毛をとってお願い事するのって世界共通なんでしょうか?
ちょっとほっこりしました。

渋滞でイライラのシーンがありましたが、やっぱりイライラシーンの定番なのですね。

嫁バージョンも作れそう

終盤、脚から水が抜けてスッキリした主人公が出発する際に嫁の頭にキスをしていました。

そしたら『それだけ?』って嫁が戸惑っていましたね。
冒頭の朝食シーンを見返してみたのですが、立ち去るシーンはありませんでした。
そのため、このシーンが普段とどう違うのかがわかりません。
もしかしたら普段は”愛してる”とかを日常的に言っていたのかもしれません。

しかし、この嫁を見るとなんか様子がおかしいです。
この嫁もなんか満たされていないんじゃない?虚無なんじゃない?

湖の絵

なにこれ?笑
と思っていたのですが、観た後に原題の意味を調べて意味がわかりました。

水は感情のメタファーなのでしょうか。
滝のように溢れ出るものなので、都度向き合わないと体に支障をきたすが、ネガティブな感情のアウトプットは社会生活では推奨されないので、この映画の世界では”脚に溜まる水”という不調で表現されたということですね。

昔見たTED TALKを思い出した

この精神科医のTED TALKを思い出しました。

『人は体の傷を見つけたらほんの擦り傷であってもバンドエイドを貼るのに、心の傷には全く無頓着だ』的なフレーズが頭に残っています。

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